後天性♀那翔のお話。リピ翔ちゃん浮フ唯ちゃん設定なのでデジャブな展開有。
話の全体はシリアスでエロはギャグっぽい。設定は気にしたらダメです…w
元々♂同士での那翔前提なので、♀になったなっちゃんがビッチに見えて、翔ちゃんはヘタレに見えます。
2人ともがっつり喘いでるので(百合ップル)、リバのようなものだと思った方がいいです。
特殊な設定すぎて説明難しいね。簡単に言えば、なんでも大丈夫な方のみ、ご覧ください。
↓スクロールしてね↓
俺――来栖翔は小傍唯としてファッションモデルをしていて、ここのところ寮に帰れる日が少なくなっていた。
「ただいまー…」
8月に入ってから1度も那月に直接会えてなくて会えるのは嬉しいけど、疲れてて構ってやる間もなくすぐに寝てしまいそうだ。
「あ、翔ちゃんおかえりなさぁ〜い」
いつものように那月に抱きつかれたところまでは良かったんだけど、あるはずのない感触に驚いた。
「な、な、那月!?」
「あんっ」
押しのけるようにして離れれば、那月がわざとらしく変な声を出す。
それに構わずに俺は目の前にある那月の胸を両手で掴んだ。
何かそういうものを入れて俺をからかうつもりなんだろうと思ったからだ。
「しょ、うちゃん……そんな乱暴にしちゃ、ダメです…」
それは思ったよりも本物らしくふわふわで弾力があった。
…って本物がどんなもんか知らねーけど。
何がどうなっているのか気になって、那月の着ているYシャツのボタンを外そうとすると、那月が俺の股間に手を当てて言った。
「翔ちゃんえっちしたいの?」
実際、俺が勃ってるとかそんなことは今どうでも良かった。
ボタンを1つずつ外すたびに見えてくる那月の素肌に鼓動が早くなる。
「…なんだこれ!?」
そうして露わになった、那月の大きな胸にそんな言葉しか出なかった。
那月の身長は変わっていないし、声も変わっていない。
ただ体つきが女みたいに柔らかくなっていて、視線を上げれば髪がサイドで1つに結ばれていて肩より少し長くなっていた。
「僕ね、女の子になっちゃったみたいなんです」
「なっちゃったってレベルじゃねえだろ!どういうことだ…もしかして、シャイニングの仕業?」
本物だと思った途端、ボタンを閉めなおす手が震えてくる。
それに気づいた那月は笑顔で俺の手を握った。
「はいっ!早乙女せんせぇが女の子にしてくれて、唯ちゃんのお仕事についていって見学してもいいって!」
「女の子にしてくれてって意味が分からん!つーか、見学ぐらいなら男でも良かっただろ…」
「それだと、怪しまれるからダメでーすって言ってました」
シャイニング…女にできるんなら、女装じゃなくて俺を女にしてくれたら楽なのに…。
なれても嫌だけど…。
にしても、ここまで胸が大きい女って早々居ねえよ…。
「……どれぐらいで戻れるんだ?」
「教えてくれませんでした。でも、いつかはちゃんと戻れるみたいですよ〜」
「アバウトだな…。お前、女なら女子寮に入らなくていいのか?」
「それは僕が元は男だからダメだそうです」
ため息をついてベッドに腰掛けると、那月もついてきて目の前でしゃがんだ。
「それもそうだな…」
女の体の那月が男子寮で暮らしてても砂月の存在は全生徒に知れ渡ってるから大丈夫だろう。多分。
「……ねえ、翔ちゃん、もう10日もしてないです…。だから、えっち…しよう?」
俺のベルトを外そうとする那月の頭を押し返す。
「いやいや、何言ってんだ。しねえから…!」
「僕のおちんちんなくなっちゃいましたけど、頑張りますから。…ね?」
「ね?じゃねーよ!明日も仕事あっから…」
女の体に興味ないって言ったら嘘になるけど、仕事がなかったとしてもどうなるか分かんねーのに出来ないだろ。
いつ女から男に戻るか分からないんなら、最中に男に戻られたらとか……流石にないだろうけど…子ども、とか…。
そもそも、女とする時の知識なんて持ってねえよ…。
「……はぁい。分かりました。オフの日、絶対教えてくださいね!」
ありがたいことにモデルを始めてすぐに仕事が増えてきて、たまにオフが出来るとその前日は必ずと言っていいほど、那月と会えない時間を埋めるようにセックスする日になっていた。
「オフの日は教えるけど、オフ前でもやらねえからなー」
「えー?僕そんなの我慢できないよ…」
「……俺も我慢するから」
そういうと不満そうだった那月の顔が少しだけ明るくなった。
はぁ…それにしても、この那月と寮で暮らすって…どうなるんだ…。
その次の日から、那月は少しずつ俺の撮影現場に見学に来るようになった。
一緒に居られる時間が増えるってことだから、ちょっと見られてて照れくさいけど素直にシャイニングに感謝していた。
ただ、那月はあの長身と胸の大きさで人目を引くからか、男のスタッフに話しかけられることが多かった。
それだけならまだいいんだけど、那月は声は男のままであんまり喋らないように言ってあるせいか、ふんわりとした雰囲気とたまに喋る言葉が柔らかいということも手伝って、強引に連れて行かれそうになることもある。
そうなる前に助け出せたらいいんだけど、撮影中にそれをやられると助けに行くことが出来なくて、そうなった時に那月は砂月に変わってしまう。
無言の圧力で相手を引かせるのは流石だと思うが、ここ数日、その那月を見ていて思ったことは必ずメガネを掛けたままで入れ替わっているということだった。
今までこんな風に入れ替わるのを俺は見たことがない。
「お前、また絡まれたろ?」
少しの休憩時間に砂月に小さく声をかける。
腕を組んでいる砂月は眉間に皺を寄せていて、機嫌が悪そうだった。
「あぁ…那月に戻る」
砂月がそう言うと、眉間の皺が取れてきて那月の表情に戻っていく。
砂月は俺と那月が付き合ってることを知っていて、その関係に何か口出しされることは特になかった。
それが那月のためだと思っているのか、俺のことを様子見しているのかは分からないけど、少し前の砂月のように言葉なく暴れることもなくなって、普通に話してくれるようにはなっている。
「あれ、翔ちゃん?休憩ですかぁ?」
「あぁ。……なぁ、那月…大丈夫か?」
「……?大丈夫ですよぉ。お飲み物、どうぞ」
那月がペットボトルのふたを開けて、俺に差し出してくる。
それを一口飲んだところで、スタイリストの人に声をかけられた。
この人は俺の性別を知っているから、気さくに話しかけてくれるうちの1人だ。
「衣装替えなんだけど、追加の分が渋滞で遅れてるって連絡があったの。だから、空いてる楽屋で待ってて。いつもごめんね」
日に50着60着も着替えて男だとバレないような、尚且つ俺に合う服を探すから、衣装が追加で送られてくることが結構あって、帰りが遅くなるのはこのせいもあった。
それでも、着替えるだけでも時間が掛かって迷惑掛けているのは俺の方だから。
「いえ、どれぐらい掛かるか分かりますか?」
「そうねえ…40分は見てほしいかも…」
ちょうどお盆の時期と重なって、帰省する人で溢れているのかもしれない。
「分かりました。楽屋、使わせていただきます」
外に出かけられたらいいんだけど、女装してるしそういうわけにもいかない。
行くぞ、と那月に声をかけて連れ出す。
スタジオを出てすぐに、軽そうな2人組の男に話しかけられた。
「君たちモデルさんでしょ?俺たちもう撮影終わって時間あるからさ、暇ならちょっと話さない?」
月宮先生に高い声を出すレッスンを受けてるけど、こういうときはあまり話さず、刺激しないように返事をする。
「いえ、衣装替えなので失礼します」
楽屋に戻ることは確かだからそう言ってみると、どうやら甘い相手ではなかった。
「さっき、ちらっと聞こえたんだよね。衣装遅れてるんでしょ?じゃあ、暇じゃん?」
そう言われて肩を掴まれる。
あぁ、めんどくさい…。
「そっちの背のおっきいかわい子ちゃんもさ〜」
「つーか、背マジでかくねえ?女……だよな?俺、負けてんじゃね?」
那月の肩に触れようとした男の手を掴んで、睨みつける。
「おー怒った顔も可愛いね」
殴りてええ……!
こういうことは1人で仕事場に来ている時からよくあって、大抵無言で相手にしなかったら向こうが勝手に去っていくけど、今は折角那月と居るんだからその時間を大事にしたかった。
だから、掴んだ男の手を払おうとしたら、男の腕に那月がチョップをかました。
「暇じゃありません。失礼します」
痛がる相手に那月は軽く頭を下げて、俺の肩を抱き寄せて歩き出す。
話しかけてきた男が何か言っていたような気がするけど、横からさっきのスタイリストの人が通りかかって「ちょっかい出さないでよー」とフォローしてくれた。
軽く振り返って頭を下げると、手をひらひらさせてスタジオ内に消えていった。
あとでちゃんとお礼言おう…。
「……那月?」
「なぁに?」
一瞬、砂月のようにも思えたけど、そうでもなかったのか那月は見上げる俺に微笑んだ。
空いている楽屋に入ってすぐにウィッグを外して、突然誰かが入って来ても困るから鍵を閉めた。
「すげえムレる〜〜。つーか、スタジオは寒いぐらいなのに、この部屋蒸し暑いなー。一気に汗出てきたし。野外撮影だったらこの時期マジ最悪だぜ」
「本当ですねえ…」
那月はそういうと胸元の服をぱたぱたさせる。
楽屋は畳のお座敷風で靴を脱いであがると、那月も俺に続いて座敷に上がった。
「クーラーつけていいのかな。扇風機でいいか」
壁一面の鏡台の前にウィッグを置いて、鏡台に置いてあったティッシュを手にとって口紅を落とす。
どうも口紅は苦手で、ペットボトルの飲み口についたのもついでに拭っておいた。
扇風機の前に行ってスイッチを入れてから、長めのスカートを捲って風が足にくるようにする。
「こういうときスカートって楽だからいいな。ほら、那月も隣来いよ。暑いだろ?」
「わぁい!」
そういうと那月は俺の肩にピッタリくっついて座った。
いや、暑いだろ…まあ、嬉しそうだしいいか。
「しかし、あいつら…マジでイラッときたぜ…」
怒った顔が可愛いって言われたのもあるけど、那月を変な目で見やがって…!
背が高い、可愛いって言いつつ、見てるとこは胸だっただろうが…。
那月は可愛い服を着たがるけど、この身長だからサイズも合わないし、パンツスタイルで露出控えめなものを着させているけどどうしても目立ってしまう。
髪もふわふわで笑顔も可愛いし…困った顔も…。
「ええ…。翔ちゃんに触るなんて…」
「そこ!?」
「ねえ、翔ちゃん、ちゅーしていい?」
前だったら無理やりキスしてくるのは当たり前だったのに、最近の那月は毎回と言っていいほど、こうして俺に聞いてくる。
「いきなりだな。…ダメだ」
俺がしないと言ったら那月はそれにちゃんと従ってくれる。
でも、しゅんと小さくなる那月が可愛くて、たまに俺からキスをするようになった。
那月が男だった時はなんとなく自分からし辛かったけど、女だと意識すると守ってやらなきゃっていう気持ちが前よりすごく大きくなって、こういうことも前の俺からは考えられないくらい自然と出来てしまう。
と言っても、軽く重ねるだけのキスまでで、それ以上してしまうと我慢できなくなる気がするからしないけど。
多分、那月ががっついてこないのもあるんだろうな……俺も男なわけだし、那月に触れたくなるのは仕方ない。
「…ちょっとだけだぞ」
那月は俺がそう言うのを待ってたように、俺からキスをする間もなく飛びついてきた。
女の柔らかい体といっても、それなりに力も強いままだし背も大きいから、難なく押し倒されてしまう。
「ちょ、なつ……ん…!」
那月が俺の歯を押し割って舌を絡めてくる。
「……ふぁ…んっ…那月…」
那月の体を押し返そうとすると、手を握られて畳に押し付けられる。
歯列をなぞられて、溢れてきた唾液が苦しくて涙が滲んできた。
「…っ……待っ…」
ちゅ、っと音を立てて離れていった唇に銀の糸が伝っていくのが見えて、それを飲み込んだ。
そして、那月が俺のスカートを捲りあげたかと思うと、内ももを撫でてくる。
「ひゃぁ…!何してんだ…!」
俺は叫びながら、脚を引っ込めて後ずさった。
「翔ちゃんに触りたい…ダメですか?」
「ダメに決まってんだろうが!ここには仕事に来てんだからな」
「…分かってます!でも……っ…なんでも、ないです……ごめんなさい」
泣きそうな顔をする那月の傍に寄って、頬にキスをして頭を撫でてやる。
「んな顔すんなよ…もう怒ってねーから」
「はい…」
二言目には仕事、仕事、で2週間以上もしてなくて、那月はもう限界なのかもしれない。
こうして少し撫でるだけなら、恥ずかしいけどいくらでもしてやるのに…。
那月が寂しがってるのは見れば分かるし、俺がモデルしてるのも喜んでくれる。
でも、今の俺にはどうすればいいのか、分からなかった。
結局、その数日後に取れたオフの前日、当日も那月とセックスはせずに普通に過ごした。
やっぱり今の状態の那月だとどうなるか分からないし、何かあったらと思うと怖かったから、シャイニングに何度か那月の体について話を聞こうとしたけど、男に戻ったら来いという一点張りだった。
どうすれば戻るのかも教えてくれないのに、どうしろっつーんだよ。
それにしても、あのシャイニングが俺たちが付き合ってることを知った上で、退学させずに寮で暮らさせてる意味が分からない。
つーか、健全なお付き合いってやつをさせるための荒療治だったり…?あり得る…。
誰かそろそろ俺の理性を褒めてくれ…。
「翔ちゃん翔ちゃん!見てください、すっごく可愛いく撮れてますよ!」
ソファに座ってテレビを見ながら夏休みの課題をしていると、那月が嬉しそうな顔で持ってきたのは俺が初めて表紙を飾った雑誌だった。
「あーそれか。前に撮影してるとこ見てただろ?」
那月が隣に腰掛けて、首を傾げる。
「あれ?そうでした?僕、最近記憶があやふやで…いつの間にか翔ちゃんの撮影が終わってることがあるんですよねぇ…余所見した覚えはないのに変だなぁって」
だとすると砂月になってて、記憶が飛んだってことか。
この前のやつら、俺ら…というか那月を見かけるたびにしつこく絡んでくるから、常に砂月だった日もあったぐらいだ。
仕事でもないのに見学と称してるのが余計に腹が立つ。
「……那月。これからしばらく俺が仕事の時、お前は留守番な」
「…どうしてですか?」
「お前に絡んでくる奴が居るから心配なんだよ」
砂月が一睨みして去っていった奴らは、俺と那月がずっと一緒に居るのを知ってるから俺に話しかけてこなくなったけど、那月自身を誘い辛いからって俺に話しかけてきて那月も一緒に、みたいな誘われ方が増えてきた。
だから、那月が居なければ那月目当ての奴らからは話しかけられることも減ると思う。
つーか、那月を変な目で見られてるのが嫌だ。
それに断り辛い相手の時は、運よく月宮先生が様子を見に来てくれる時と被って、それとなく断ってくれることもあったし、スタッフもだいぶ見知った顔が増えてチームとなって助けてくれるようになっていた。
「それは僕だって同じ気持ちです!」
那月は頬を大きく膨らませて、唇を尖らせた。
「…俺はスタジオもだいぶ慣れてきて、助けてもらうこともあるんだし、もう大丈夫だって」
那月の力には及ばないけど空手があるし、本当にやばかったら何もない胸でも見せ付けてやればいいから。
そう思って明るく言うと、那月は泣きそうな顔をした。
「……翔ちゃんは僕と一緒に居たくないの?」
「なんでそうなる?俺はお前が心配――」
「僕が女の子になっちゃったから?だから、翔ちゃんえっちしてくれないの?」
「…はい?」
流石にこれは突飛過ぎるだろう…どういう思考回路なんだ。
確かに那月が男に言い寄られて心配だというのもあってるし、セックスも女だから出来ないって思ってるのもあってる。
でも、俺は砂月との人格の入れ替わりの多さが一番心配なんだ。
「あー……とにかく、最後まで聞け。俺は那月の記憶が頻繁に飛んでることを心配してんだよ。寮に居る時はそうでもないだろ?だから、少し休もうって話を…」
「でも、僕…記憶がないなぁって思うこと、寮でも良くあったから…」
「え…?」
「8月に入ってから特にそうなってて…突然現れた早乙女せんせぇが診察してくれて、気づいたら女の子になってました」
8月に入ってからって、俺が10日ぐらい寮に帰れなかったときか?
メールも電話もそれなりにしてたはずだけど、そんなこと一言も聞いてない。
「シャイニングはなんて言ってた?診察したんなら結果聞いたんじゃねーの?」
「治療には翔ちゃんが必要不可欠だって、だから女の子にしてくれたんだって」
記憶が消えるのは砂月になっている間のことだから、砂月との人格の入れ替わりを減らすというのは分かるけど、それがどう俺に関わりあるのか分からない。
那月が寮に居る時に砂月になってしまう頻度は分からないけど、むしろ撮影の見学や街で絡まれたときに砂月になってしまってるから、それだけで見るなら悪化してる気がする。
「俺が必要…不可欠…」
それで、女…?
あぁ、男の姿で俺の仕事場を見学するのは怪しいからダメだとかなんとか言ってたよな…。
女になったことで一緒に居られる時間は増え――
「だああああああああ!!つまり、お前さ…寂しかったってことか?」
寂しがってるのは前から分かってたけど、どう言って伝えればいいのか分からなかった。
人格の入れ替わり〜なんて言えないしな。
「寂し…」
叫んだ俺に那月は目を丸くしたかと思うと、その目から涙が溢れてきた。
砂月の怖さばかりを見て、二重人格は精神的に大きく関係のあるもの、というのが見えていなかった。
人格がすぐに入れ替わるようになってたのは、那月の精神が不安定だったから、か…。
気づくの遅すぎだ。
那月を抱きしめて、こぼれてきた涙を掬い取る。
「寂しい想いさせてごめん…」
小傍唯として活動を続けるにしても、来栖翔としてデビューするにしても、那月もデビューするだろうから、たったこれだけの期間でこうなってしまったら那月はどうなるんだろう。
それぐらい那月が俺を好きだってことに対しては嬉しいけど、単純に喜んでいいわけがなかった。
強く抱きしめて、那月が泣き止むのをじっと待つ。
「俺だって寂しかったけど、お互いにデビューしたら一緒に居られる時間はもっと減る…。このまま小傍唯として売り出すかどうかも迷ってたけど、その時の予行演習ぐらいに思ってた部分もあるんだ。…だから、我慢できてたのかもな」
「…翔ちゃんが、雑誌に載ってて嬉しいって、色んな可愛いお洋服を着てるのを見られて幸せだって…そう思ってたはずなのに、あれは唯ちゃんで、翔ちゃん自身のいいところを見てほしいな、って…いつの間にかそう思うようになってて…おかしいよね。僕が翔ちゃんの写真を勝手に送っちゃってこうなったのに…」
…え、それって、俺に会えなくて寂しいんじゃなくて…。
「なんだ、そういう意味か」
「うん…?」
首を傾げる那月の額を小突く。
「なんでもねーよ。ま、それなら俺にも考えがあるから、お前は気にすんな」
そうして、俺は小傍唯を辞めた。
那月が寂しがってるのは間違いないし、那月が俺自身のいいところをみんなに見てほしいなら、辞めるのに躊躇する必要なんてないからだ。
すでに受けていた仕事を終わらせるのに、夏休み終了間近まで掛かってしまったけど。
寮の部屋で夏休みの課題を片付けながら、那月に問いかける。
「で、お前はいつ男に戻るんだ…?」
「さぁ、どうでしょう…?」
首を傾げる那月の体に目をやれば、白いタンクトップと黒いショートパンツだった。
仕事をしている時は寮には風呂や寝に帰るようなものだったから今までそれほど問題視してなかったけど、寮内でゆっくり過ごすようになって2日が経った今、目のやり場に困っていた。
外に出かける時は露出の少ない服にしろと言ってあるけど、可愛いもの好きの那月にしては寮の部屋でもかなりラフな服を選んでるのも不思議だった。
それに、今着ている服はサイズが合わないのかピッチリしていて、那月は部屋に居る時に上の下着をつけていないから…その…乳首が…。
これじゃあ、ただの生殺しだ。
「いい加減、その格好やめろっつってんだろ…」
那月は自分の体を見て、胸を持ち上げる。
「…ムラムラする?」
「うっせ…!」
課題に集中しようと机に向かうと、那月が俺の腕にそっと胸を押し付けてくる。
「翔ちゃん…我慢しないで。僕ももう我慢出来ません」
那月が艶めいた声で言ってきて、俺は必死に腕を振りほどく。
「あぁあああ、アホかっ!!お前自分が今、女だってこと忘れんなよ…!」
「忘れてませんよぉ!だから……ね?」
那月はそう言って、自分の太ももを下から撫で上げて、空いた手で自分の胸を持ち上げてみせた。
つまり、そんな薄着で居るのはずっと俺を誘ってたって、そういう…。
意識した途端、一気に頭まで沸騰しそうだ。
顔を逸らして黙っていると、軽々と抱きかかえられてベッドに放り投げられてしまう。
「待て、待ってって…!ちょっと落ち着け」
那月の体を押し返すと、那月はにっこり笑った。
「大丈夫!ちゃんと気持ちよくしてあげますから」
やっぱり、仕事という言葉で那月を抑えられてたのが大きかったのかも…。
那月は俺に覆い被さって、逃げようとした俺の腕を掴んで頭上に束ねあげてくる。
そうして、服の下に那月の手が入ってきて、俺の腰に触れた。
「…ちょ、なつ……んっ…」
声を上げれば、キスで塞がれてしまう。
那月は大きな胸を俺に当てるように、少しだけ体重を乗せてくる。
那月の体温の温もりなのか、自分の熱なのか分からない。
つーか、那月が女の体でも、俺は結局下なのか…!?
貪りつくようなキスに視界を歪めると、那月のメガネに涙がぽたぽたと落ちているのに気づいた。
那月は目だけで無理に笑って、俺に重なるように倒れて抱きしめてくる。
いつも力強く抱きしめる那月の腕が震えていた。
「翔ちゃん、好き…大好き。翔ちゃんとこうすることが出来なくて寂しくて悲しくてたまらない」
「……一緒に居るだけじゃダメか…?」
那月の頭をぽんぽんと叩いて聞くと、那月は頭を横に振った。
「もう、ダメ…なんです。えっちしてる時の翔ちゃんの可愛い顔がもっと見たい…翔ちゃんの可愛い声をもっと聞きたい、翔ちゃんを…感じたい……」
ため息を吐き出す。
「可愛いっつーのは余計だけどな、お前…それ俺の体目当てって言ってるようなもんだぞ」
そういうと黙り込む那月に俺の方が不安になる。
仕事という理由があってもこれまではそれに耐えてこられたんだから、ちゃんと体だけじゃないって分かってるし、やっぱり俺が前に考えてた通り那月の人格が不安定になったのは寂しかったのが主な原因なんだと思う。
じゃなかったら、シャイニングが那月を女にした理由がどうしても見つからない。
「ったく、どうなってもしんねーぞ」
「……触ってもいいの?」
「…聞くなっ!」
顔を手で隠しながら言うと、那月は力を込めて抱きしめてきた。
「翔ちゃん大好き!」
「いだだだっ!」
痛がる俺をよそに那月は嬉しそうだった。
「ちょ、やっぱ待っ、…ん……ぁっんん…」
那月は制止する俺を無視して、俺の胸の先端を口に含めた。
「ふぁい?」
「あん…ぁっ…これ……おかしい……っ…」
もう上の服は剥ぎ取られてしまっていて、空いた方の胸は手で摘んだり弾いたりしてくる。
今の那月は女なのに、なんで俺の胸いじってんだ…!?
どうせなら俺が押し倒すべきなんじゃ…。
那月の頭を押し返して、離れるように促す。
「どうしたの?翔ちゃん、おっぱいも気持ちいいよね?」
「……そうじゃなくて」
意を決して那月の体を押し倒して、那月のタンクトップに手をかける。
「わぁ、翔ちゃん、今日こそは僕の上で踊って…って、…僕…今、女の子なのすっごくがっかりです…」
「は?上で踊っ――」
言いかけて意味を理解した途端、顔が真っ赤になるのが分かる。
何度も那月にお願いされた騎乗位はまだ1度もしたことがなかったからだ。
顔が熱くて黙り込んでいると、那月は自分のタンクトップを捲り上げて露わになった胸に手を添える。
そして、語尾にハートがつくようなそんな口調で言った。
「翔ちゃん、僕のおっぱい食べて」
寝転んでいるのに横に流れずに大きさを保っている那月の胸は大きさもそうだけど、弾力と張りをうかがわせて喉が鳴る。
「さ、触る…ぞ…」
「うん…優しくしてね」
そっと右手で包むと、張りがあるけど指が埋まりそうなほど柔らかかった。
左手でも同じようにそっと包んで、少しだけ力を入れて揉んでみると那月は小刻みに震えた。
「あん…っあぁ……あん、翔ちゃ、…ん…あっ…ぁっ」
那月の顔を見れば薄く目を閉じて、浅い呼吸と共に吐息が混じった甘い声が漏れていて、那月の体温が上がっていく。
「お、俺が恥ずかしいわっ…!」
俺は早々に手を離して、那月に背を向けてベッドの隅に座る。
可愛くてもっと聞いていたいって思うけど、どうしても恥ずかしさが上回ってしまう。
自分がこんな声を出してる時も恥ずかしくて居たたまれないのに、何でそれを聞いて照れないで居られるんだ…意味分からん…。
「僕は恥ずかしくないのに〜!うーんと、じゃあ、僕の番!」
那月は俺の背中に胸を押し付けるように抱きしめたかと思うと、首元にちゅっちゅと吸い付いて痕を残していく。
背中に全神経が集中したみたいに熱い。
そうして、那月は手を前に回すと後ろから胸の先端を弄ってきて、反射的に背筋を反らした。
「ぁん……ぁ…ふっ……ぁあ……んぁ……っ」
「可愛い…翔ちゃん大好き……」
「ひゃあっ!」
耳の後ろを舐められて、後ろに倒れそうになる。
「翔ちゃんのここ、おっきくなってます」
那月はそう言いながら、俺の股間に触れて軽く撫で上げた。
「そりゃ…なる、だろ……」
「ふふ、それじゃあ、僕がもっと気持ちよくしてあげます」
那月はそういうと、再び俺を押し倒した。
「……んんっ…!!」
唇を噛み締めて声を抑えていると、那月がむっとした顔で言った。
「僕は翔ちゃんの可愛い声が聞きたいって言ったでしょう?さっきまで聞かせてくれてたのに…我慢しちゃ、めっです!」
「だって…那月…」
那月は俺のものを挟み込んだ柔らかい胸で、ぎゅ、ぎゅ、と締め付けてくる。
胸ってこんな風に使うものなのか…?
でも、すげえ温かくて気持ちいい…。
那月は俺のものの先端にちゅっとキスをして、舌で舐め上げた。
「あん……っふぁ…ん…」
「…翔ちゃん、……っまだ声、抑えてますよね?…ちゅ、んぅ」
那月はそう言うと先端に強く吸い付いてきて、達しそうになるのをなんとか堪える。
「ん、あぁああっ……待っ、んは……も、出る…からっ…」
「はぁい、どうぞ〜」
那月はそういうと先端を舌で強く押さえつけた。
「ひゃあぁあぁ……っ!!」
刺激されて声を上げると、那月の舌が離れて少し遅れて熱を吐き出した。
「わぁ、翔ちゃんのみるくいっぱい出ましたねぇ」
那月の顔にあまり掛からなかったことにほっとしていると、那月が自分の胸やお腹に飛び散った精液を指で掬って舐め取った。
「…はぁ、はぁ…ん……お前…何のために俺が出すの我慢…したと……」
「あまい…?」
「…んなわけねえんだから…舐めんなよ…!」
「そんなことないですよぉ。翔ちゃんのみるくっていつもおいしいんですっ」
あぁ、那月は舌が馬鹿なんだった…。
じゃないとあんな料理を食べて、おいしいと思うわけがないんだ。
「……もう知らんっ」
「うーん、おっぱい使うより、僕お口でする方が好きかなぁ…。あ、でも、翔ちゃんがちっちゃいお口で一生懸命僕のをぺろぺろしてくれるのもすっごく可愛くて…」
那月にうっとりした顔で言われて、その時のことを思い出して耳まで熱くなる。
「恥、ず…かしいことを言うなっ…!思い出すなっ!!」
「嫌です…!翔ちゃん翔ちゃん、もう挿れていい…?」
「……え゛?」
「だって、僕…翔ちゃんのこと思い出してたら、こんな…」
那月はそう言いながら膝をつくと、自分のショートパンツを膝まで下げて、下着を捲って見せた。
下着は濡れに濡れていて、愛液が糸を引いている。
「ばっ…!おまえ、ちょ…!!」
思わず、布団にうつ伏せになろうとしたら、那月は俺の手を掴んで言った。
「ほら翔ちゃん、女の子はね、ここが気持ちいいんだよ」
那月は自分の割れ目を無理やり俺に押し開かせて蕾に触れさせると、高い声を上げて上体を逸らした。
「ひゃあんっ!」
そこは一瞬、触れただけでも分かるほどぬるぬるしていて、俺に欲情しているだけで那月がこうなっていると思うと、唾液が溢れてきてこめかみからは汗が零れ落ちた。
これは…胸だけでも目のやり場に困ってたのに…。
上がっていく熱に反して那月を見ていられなくて、手を引っ込めようとするけど、那月の方が力が強くて振りほどくことが出来ない。
「翔ちゃん触ってくれないの…?ねぇ、僕も気持ちよくして…?」
「おま、え、は恥じらいってもんを持てっつーの!」
「えー?でも、翔ちゃん、またおっきしてるよぉ?」
「んな、こと…言ったって……」
鼓動が早すぎて倒れてしまいそうだった。
那月は首を傾げてにっこりと笑った。
「大丈夫、僕がリードするから、ね?」
くそっ、これじゃあただのヘタレじゃねえか…!
「……わか、った…」
さっきと同じように蕾に軽く触れると、那月は仰け反って後ろに倒れてしまった。
「あぁん…!」
そのまま那月は膝を立ててショートパンツを脱ぎ捨てると、自分の恥ずかしいところを見せるように開く。
那月にここまでさせてんだから逃げてる場合じゃないだろうと、息を飲み込んだ。
覆い被さるように腕をついて、もう1度割れ目に触れる。
「ここ、こうして…」
言われるままに蕾を親指でぐっと押し上げると、那月の体が跳ね上がった。
そのまま蕾を擦るように小さく上下させると、那月が立てた膝がまっすぐ伸びて痙攣するように震えた。
「…っ……ぁ……ん…あっ……しょ、ちゃ…、」
苦しそうに目をきつく閉じて、目尻から涙がこぼれている。
「……那月?…もしかして、痛い?」
聞いても那月は首を横に振るけど、その状態は変わらなくて小刻みにビクつかせている。
擦る力を弱めてみると、那月が大きく息を吐いて、胸を上下させた。
「はぁ……はぁ…ん、あっ……ぁあっ……はっ、あぁん…」
頬を蒸気させて、擦れば擦るだけ那月から甘い吐息が混じった声が止め処なく漏れてくる。
白い肌もほのかに赤く染まっていて、汗が胸の谷間に滑り落ちて俺の精液と混じっていやらしく写った。
「……そんなに気持ちいいのか?」
擦ってやれば背筋を限界まで反らせて体を震わせ、そっとその下に触れれば愛液が溢れているのが分かる。
「…ぁっ……あぁん……気持ち、いいです…んっ…翔ちゃん…王子……」
那月の色気がありすぎて、自分のものが一層熱くなってくるのを感じて、気持ちいいんならと力を強めてみると、那月は降りていた背中を大きく反らせて、より高い声を上げた。
「あああぁぁっーー…!」
そして、那月は小さく震えながら、ぐったりとしてしまった。
ああああもうさっぱりわからねええ…!イッた…とか?
手を離して、那月の涙をそっと拭う。
「大丈夫か?」
「ふぁい…イッちゃいました…」
これぐらいで慌てて、俺、童貞丸出し…。
まぁ、男とする方の知識ばっかで、女なんて考えたことねえし…。
中学の時にグラビアやアダルト雑誌見ようぜ、なんて誘ってくる友達はいたけど、興味よりも恥ずかしさが勝って結局見ることはなくて、早乙女学園に入ったら入ったで男を好きになったから。
「…はぁ…は……も、挿れちゃいますよぉ」
那月は浅く呼吸してそう言いながら起き上がると、俺をやんわり押し倒した。
「……翔ちゃんの初めて…僕、両方もらえるなんて嬉しい…」
バレバレだろうな、と思ってたけど、実際に言われると耳まで熱くなってくる。
つーか、こっち側の初めてってお前が男の時でも出来なくはないだろ…。
そう思っていると那月が俺のお腹の上に乗って、熱い愛液が垂れてくるのが分かる。
…これ、は…那月がずっとして欲しがってた騎乗位…か?
レンにからかわれて渡されたコンドームどこやったっけ…。
そう考えた時、俺は少し冷静になれたのかもしれない。
那月が女の状態で繋がってどうなるか、ずっと不安に思って避けてきたのに、してしまって大丈夫なのか?
ただでさえ、女なら余計に体を大事にしろって思ってしまう。
那月が男でも女でもそれは変わらないけど、俺は元々ノーマルだったんだから、そうなってしまうのも当然で。
「……いや、待て、ここでやめようぜ…風呂で自分でやるから」
「ふぇ……やっぱり…翔ちゃんは僕が女の子になっちゃったから嫌なんですね…」
「嫌とかじゃなくて――」
「翔ちゃんこそ、僕のおちんちん目当てだったんじゃないですか…!」
「!?…そ、ういうこと言ってんじゃねぇから!」
何でそうなったのか意味が分からん…。
那月が声を上げて泣き出して、俺は慌てて弁解する。
「ちが、違うから…ただ今の那月の体がどうなるか分からなくて怖いだけで……そ、そもそも、俺だってお前と付き合う前は男を好きになって悩むぐらいにはノーマルだったんだからさ、ええとだから、たまたま好きになったやつが男だったってだけで、…ああなんだもうわけ分からん」
必死に話している途中で那月が泣き止んだと思ったら、那月は声を低めて言った。
「つまり、どういうことだ」
一気に顔が青ざめた気がする。
「……もしかして…砂月さん…?」
「いいから、はっきり言ってやれ。泣かすぞ?」
「あああもう、性別がどっちでも那月が好きなのには変わりねえよ!!」
そう叫ぶと、砂月が一瞬微笑んだかと思うと、意識を失ったのかこっちに倒れてきた。
声をかけようとして、さっきまで確かにあった大きな胸がないことに気づいた。
「え…」
肩や腕もがっしりしている。
体を横にずらして寝転がすと、完全に男に戻っているようだった。
次の日になっても、那月は男の体のままだったから、やっと戻ったんだと喜んだ。
那月は少し残念がると思っていたけど、そうでもなかったようだった。
伸びていた髪は男に戻ってもそのままだったから、夏休み明けまで楽しむ、とは言っていたけれど。
まあ、そのあと那月の気が済むまで付き合わされて1日が終わってしまったけど、那月が幸せそうだったから腰の痛みなんて飛んでいきそうに思えた。
夏休みに寮に残ってる人は多いから、レンのようにコンドームを渡されてからかわれたり、那月が口説かれたりで実は結構大変だったけど、シャイニングが那月のことを外に漏らさないように寮の規則に追加してくれたのもあって、特に大事もなく済んでたし、とにかく夏休みが終わる前に戻ってくれて良かった、ということにしておく。
そうして、那月とシャイニングの元に行くことにした。
「思ってたよりも遅かったデスネー」
「全くだぜ…!とりあえず、ちゃんと説明してもらおうか!」
「Oh…ソウデスネー…まず、2人の関係は本来なら退学処分にするべき行為なのはわかってますネー?」
那月と手を握って返事をする。
「はい」
「分かってる」
「素直でよろしい。そうしなかったのはー第一に四ノ宮那月は才能があるからしてー、ミーは高く評価してイマース。それは来栖翔、YOUも同様にシャイニング事務所に欲しい人材なのデース」
シャイニングはそこまで言うと、カタコトをやめて早口で続けた。
「もちろん卒業オーディションには勝ってもらわなければならないが、それまでに潰れてしまうには惜しかった。特に四ノ宮那月の記憶障害についてだ。これは非常に繊細な問題であるから彼のメガネを外した上で話す」
「は…?」
「はい、分かりました。これでいいですかぁ?」
那月は言われた通りにメガネを外してしまった。
メガネを外しても那月のままかと思ったけど、表情が険しくなって砂月になっているのが分かる。
砂月は手で胸に何もないのを確認して言った。
「どうやら戻ったらしいな」
「…あ、あぁ」
「前に診察した時に四ノ宮砂月とは少し話をしていてな。四ノ宮那月の精神が不安定なのは来栖翔、お前に会えない時間が長すぎるせいだと聞いた」
俺が考えていた通りだったけど、シャイニングは続けて意外なことを言った。
「それともう1つ。四ノ宮那月は男女の性について悩んでいた。お前に会えない日が続けば続くほど、深く暗い闇となって精神を蝕んだ」
「そんな…素振り……いや――」
最近になって那月は女だから、男じゃないからとよく言っていた。
「思い当たる節はあるようだな。悩むようになったきっかけは、お前が小傍唯として女装モデルを始めたことが大きな原因だったのだろう。男のお前が好きなのか、女装しているお前が好きなのか、女装ではなくお前が本当に女だったら良かったと思ったのか…恐らく、その狭間で迷っていた。だから、四ノ宮那月本人を女にすることで一度リセットさせ、より深く考えるように仕向けた」
俺もそれなりに悩んだことはある。
特に那月を好きだと気づいてから、付き合うに至るまでの間だ。
中学までは普通に暮らしてて、ゲイだったつもりはないし、そう意識したこともなかったから、那月と初めてするときも相当嫌がった記憶がある。
もしかすると、その辺りから不安を抱えていて、会えない時間がそれを増幅させたのかもしれない。
「俺はチビが那月をどう思ってるのかを見てたのもあるがな」
「…そうか。…結局、那月がそれを吹っ切れたから男に戻れたってことか?」
「完全に吹っ切れたかは分からないが、少なくとも四ノ宮那月自身が男であることを強く望んだから戻れたのだろう」
「それって強く望んでなかったらどうなんだよ…」
「どちらにせよ、1ヶ月で切れる予定ではあったが、それまでに戻らなければお前たち2人の退学を考えていた」
…1ヶ月って、あと10日あるかどうかか。
あの誘惑によく堪えた方だな…。
そう自分に感心していると、砂月が鼻で笑った。
「お前がいつまで経っても覚悟を決めないから、男で襲う方がいいって思ったんじゃねえの…?」
「ばっ!!何言ってんだ!」
確かにあの日は那月にリードしまくってもらったけど、同じ那月相手でも俺はずっと下だったわけだし、そんなん戸惑って当然だっつーの…!
「…冗談だ」
砂月にしては珍しくふっと笑ったかと思うと、自分でメガネを掛けた。
那月は俺の可愛い顔を見たい、可愛い声を聞きたいと言ってたんだから、あながち冗談ではなさそうなのが癪だった。
「お話どうなりましたかぁ?」
「とにかく、健全なお付き合いをしてくださーい、ということデスネー!」
シャイニングに腰辺りを軽く叩かれて、床に崩れてしまう。
「うげっ!」
そういえば、シャイニングアイは何でもお見通しって言ってるのを聞いたことがあるけど、一体どこまで…。
って砂月が言ったの聞かれてるし、バレバレなんじゃねえか…?
そう思ったら顔が赤くなってくる。
「翔ちゃん大丈夫?早乙女せんせぇ、僕たちはいつでも健全な男の子ですよぉ!」
「ハッハッハ!それをどう取るかは考え物デースが、また悩み事があったらいつでも来てくださーい」
健全な思春期の男子…とくればそういうことで頭がいっぱいだっていう…そういう…。
震える手で腰を摩っていると、那月に手を差し出されて、それを握って立ち上がる。
「はぁい。失礼します」
「いいか、那月。卒業オーディション出て、2人一緒にシャイニング事務所に入ろうぜ」
「もちろんです!」
「絶対だぞ」
「はい!頑張ります!!」
「よし!じゃあ、何か悩みがあったら、シャイニングじゃなくてまず俺に相談すること。いいな?」
「…へ?僕、悩みなんてないですよぉ?」
「もし出来たら、でいいから。俺と約束しろ。ほら小指」
「分かりました!ゆーびーきーりげーんまーん」
「うっそついたら、わっかれるぞ!」
「えええ!?翔ちゃんと別れるなんて絶対嫌です!!」
「…だったら……約束、ちゃんと守ればいいだけだろ?…俺はシャイニングより、この来栖翔様を頼れって言ってんの!」
「………はい。翔ちゃん大好きっ!」
「はいはい。……俺も、好きだぜ」
「か、可愛い…ぎゅ〜〜!!」
「いだだだっ!!」
fin.
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シャイニーの口調難しい!なっちゃんの台詞もかなり難産でした。
なぜ♀なっちゃんなのかというと、私がなっちゃんのパイズリ書きたかっただけ。でも、実際にさせてみると、なっちゃんは直でぱくつきたい人なんだな…と思った。それともう一つ、なっちゃんだったらきっとノリノリで騎乗位してくれるんだろうな…でゅふふ^p^みたいな、よだれが垂れそうだったからこの話を書くことにしたのに、入れなかったのはシリアス展開の設定変更もあるけど一番はこの話が♂那翔前提だから、かな…。
※あとがきの酷さはこれが普通なんだと思うことにしてください。
執筆2012/02/12〜16