睡眠導入剤

翔ちゃんが誕生日に近づくと夜眠れなくなってしまう話(持病の設定有りで手術痕にも少し触れてます)。メイン的にはそろそろ21歳を迎えようとしている翔ちゃんで、学生の頃からさっちゃん含めて(非統合)付き合ってます。翔ちゃんの性格はdebut寄りかもしれません。シリアスめ。
大丈夫な方のみ、ご覧ください。
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5月も終わりに近づくと、日中の気温が真夏日を記録することもあり、夜までその蒸し暑さが続く日が増えてきた。東京の暑さは数年過ごしてみてもなかなか慣れなくて、お風呂から上がるとほてほてとした蒸気で体が包まれているようだった。
冷蔵庫から良く冷えたオレンジジュースをコップに注いで一口。冷たいそれがすーっと喉を潤していく。
「……翔ちゃんも飲みますか?」
翔ちゃんはソファから前のめりになってテレビゲームに熱中していた。先にお風呂から上がった翔ちゃんの頭にはタオルが乗っかっている。いつもは僕にお風呂から上がったら早めに髪を乾かすように言って、自分もそうしているのに今日はそっちのけだ。それはあの時期に入っている印だと、もう一つコップを手に取った。
「よし、いけ、いける、おっしゃー!!」
カチャカチャとコントローラーのボタンを押して、歓声と共にバンザイしながらソファへ倒れこんでくると嬉しそうな顔とばちりと目が合った。
ソファの上でひっくり返るようにこっちを振り返って手が伸びてくる。
「サンキュ」
コップを1つ渡すと、翔ちゃんはごくごくと一気にジュースを流し込んだ。
「いいえ。クリアできたんですね〜おめでとう」
「おう、やってやったぜ。苦節数時間……長い戦いだった」
帰ってきてからずっとテレビゲームをしていて、もう少しでクリアできそうだからとお風呂に入ろうとしないから、無理やり抱き上げて連れて入ったのだけど、あっという間に出て行ってしまった。
3年前のマスターコースであいちゃんが組んだスケジュール通りに一日をこなすことに慣れた反動なのか、この時期の自由奔放さは年々増してきている。その自由奔放さ、というのは家の中だけのことで、少し引き篭もりがちになるだけ。五月病と少し似ているけど、学園に通っていた頃からあったしそもそもの原因が違っている。
翔ちゃんはコントローラーを握ると再びゲームを始めた。
時計の針はもう0時目前だった。
「僕は髪乾かして先に寝ちゃいますね〜」
洗面所に戻りながら言うと、問いが返ってきた。
「え、もう寝んの?お前も仕事昼からじゃなかったっけ」
「あ、そうそう、繰り上がって朝からになったんですよ〜」
「それ先言えよ。俺も寝る」
翔ちゃんはさっとゲームの電源を落として、頭に乗っかったままのタオルで髪をがしがしと拭きながら歩いてくる。
この業界ではよくあることで、僕のスケジュールを大体把握している翔ちゃんでも急な変更は伝えない限り分からない。忙しいときは睡眠時間もままならないこともあるし、休む時間が取れる日まで僕の生活に合わせる必要はないと思うから、言わないこともある。この時期なら尚更だった。
「翔ちゃんはお仕事お昼からでしょ?ゲーム、やりたいんだったらやっててもいいですよ?」
「いいんだよ。お前が寝入ってるところに潜ったら起こしちまうかもしれねーしな」
続けて小さな声で、あとで砂月に怒られたくもないし…と聞こえてくる。
それに対して、聞き捨てならなそうなさっちゃんに苦笑する。
翔ちゃんもちゃんと分かってるよ。さっちゃんが僕のことだけじゃなくて、翔ちゃんも心配してのことだって。
さっちゃんを宥めていると、翔ちゃんが不思議そうになんだよ、と肘でつついてくる。
「んー?優しいなって」
「…?別に普通……あ〜でもな……」
訝しそうに首を傾げると、翔ちゃんは小さく口ごもった。
それに思い当たることは一つだった。
「翔ちゃん、僕はいつでも歓迎ですから。ダメそうなら早めに言ってね」

あれは僕たちがまだ学生だったころのこと――。

月は空高く昇り、夜も深い時間にふいに目が覚めた。翔ちゃんは寝相があまりよくなくてベッドから落ちはしないけど、寝返りが多めで衣擦れがよく聞こえる。寝息は愛らしく、寝苦しそうなときには僕の名前も漏れ聞こえることがある。僕に助けて欲しいのかと思って起こしたら、夢で僕のお料理地獄に遭ってたとか。夢で見るほど僕のお料理が食べたかったのかな、と翌朝の朝食を張り切ったなんてこともある。
その日もまた寝言で何か呟いているのか、ぽそぽそと小さな声がして耳を澄ました。
「ひつじが559匹……ひつじが560匹…ひつじが――」
それは眠れないときに数える羊さんだった。眠れないの?と声を掛けてしまいそうになるのを慌てて口をつぐむ。声音が弱っているような、そろそろ眠りに落ちそうな気がして、邪魔しちゃいけないと思ったのだけど、一つ寝返りを打った翔ちゃんは溜め息をついて続きのカウントを始めてしまった。
僕は眠れないときは星空を見る。翔ちゃんみたいに羊さんやピヨちゃんを数えることもあるけれど、吸い込まれそうなほど真っ暗な夜空に輝く星々は僕を抱いてくれているような気がするから。
眠れないのはきっと何か悩み事があるんだ。その悩みは僕には分からなくても、眠る間のほんの少しの間だけでも傍にいることで何か変わるかもしれない。気が紛れるかもしれない。苦しいなら相談して欲しかった。
羊さんが580匹を迎えるとき僕は動いた。
翔ちゃんのベッドへ膝をつけると、翔ちゃんの肩がビクッと震える。恐る恐るといった様子で振り返る翔ちゃんに、ピヨちゃんのクッションをお面のようにして構える。
「僕も眠れないピヨ。一緒に寝てもいいピヨピヨ?」
「なんだ…那月か」
「那月じゃないピヨ、ピヨちゃんですよ〜」
ピヨちゃんのクッションからちらっと窺うと、翔ちゃんは頭を掻いて掛け布団を捲った。
「……来いよ」
喜んで枕を並べて翔ちゃんの布団に納まる。
「悪い……うるさかったか」
翔ちゃんは僕が一緒に寝たいって甘えても、ほとんど嫌がらない。男同士で変だとも、年上だとか大きいくせにとも言わない。ううん、言われたことはあるけど、本音じゃないのが分かる。絶対最後には許してくれる。今も何かに悩んでいるはずなのに、翔ちゃんはとっても優しかった。
「ええとね、翔ちゃんの羊さん子守唄みたいだからもっと近くで聞きたいなって」
「子守唄ァ…?気なんか使わなくていいぜ。気になって眠れなかったんだろ」
「本当ですよ〜じゃあ僕が羊さん数えてあげます。絶対子守唄に聞こえますから…いいですか、さん、はい!ひつ〜じさ〜んがい〜っぴき♪ひつ〜じさ〜んがに〜ひき♪ピヨちゃんも加わってさ〜んびき♪めぇ〜めぇ〜ピヨちゃん♪」
「いやいや、お前それ完全に歌ってんじゃん」
ビシッと肩に突っ込みが飛んできて、くすっと笑った。
「子守唄ですからね〜ふふ。でも、翔ちゃん寝付きいい方なのに珍しいですね」
「あぁ…ちょっと……テストが気になってさ。もう寝ようぜ」
僕とは反対に向いてしまう翔ちゃんの首の下に腕を通してこちらに抱き寄せる。
「ん、何?」
きょとんとして見上げてくる翔ちゃんのお鼻にちゅっとキスをする。
「眠れるおまじない。一緒のベッドでも、僕と反対向くなんて寂しいです。ちゃんと一緒に寝ましょう?暑いぐらいぎゅってすれば、テストもどこか遠くにいっちゃって眠れるかもしれませんよ」
腕の中にいる翔ちゃんがぽかぽかと温かくなっていくのを感じると、翔ちゃんが笑った。
「……ふは、なんかバカバカしくていいかもな。でも、暑い」
ぐっと胸を押し返してくる腕の力に負けないように更に力を込めると、ギブギブと降参してぷりぷり怒った。

次の日もその次の日もテスト期間中も眠れない日が続いたせいか、翔ちゃんはテストの手ごたえはよくなかったようだった。眠れない時間をベッドで過ごすよりはマシだと言って、机に教科書を広げたまま眠ってしまった日もあったし、睡眠不足が影響してか、翔ちゃんが得意であるダンスの実技も力が出せなかったのかもしれない。
でも、翔ちゃんから聞いた眠れない原因のテストが終わっても、翔ちゃんの羊さんは続いた。
心配になってベッドを降りようとしたとき、制するように声が届いた。
「ごめん、煩いよな」
「バレちゃいました。僕はただ心配で――」
「なんか、眠れない眠れないって考えてたら、だんだんどうやって眠るのか分からなくなっちまって」
嫌になる、と消え入りそうな声で続けた。腕で顔を隠す翔ちゃんがまるで泣いているみたいに見えて、胸がぎゅうと痛んだ。
「そうだ、ホットミルクでも作りましょうか?体が温まってよく眠れ――」
「いや、いい…」
遮るようにして言われた言葉に、構うなと言われたような気がした。
僕は寝付きが悪いときの対処法を調べて、翔ちゃんを大浴場に誘ってゆっくりと体を温めたあとはストレッチなんかも効果的だとここ数日試していた。一緒に眠る日も増えたけど、劇的に寝付きがよくなるわけでもなくて、翔ちゃんには反対にドキドキして苦しいと言われてしまったこともある。音也くんや真斗くん、トキヤくんやレンくんにも翔ちゃんの様子を聞いてもいた。音也くんからはテストが始まる数日前だけでなく5月中はほとんどサッカーに誘っても断られていたとか、真斗くんからは朝に調理室で会わなくなったとも。トキヤくんからは木陰で丸くなってお昼寝しているところを見かけるようになったとか、レンくんからはからかってもツッコミに覇気がなくてらしくないと言っていた。
その中で、夜寝付けない原因はテストだけじゃなくてお昼寝かとも思ったのだけれど、その様子を見に行ったとき翔ちゃんが胸を抑えているのを見てしまった。すぐに落ち着いて昼寝に変わったといっても、僕が想像するよりずっと辛いはずで僕がほかにしてあげられることは何だろうとずっと考えていた。
せめてきちんと眠ることだけでも出来れば体の負担は減るはずで、お風呂で得られる体温の上昇とリラックス効果以上のものを翔ちゃんに与えることが出来れば――。
そう思ったとき、あるひとつのことが浮かんだ。
「…………翔ちゃん、嫌だったら言ってください」
決死の覚悟で布団を捲りあげ、翔ちゃんのズボンに手を掛ける。膨らみをなぞるように辿れば、翔ちゃんは飛び上がった。
「な、つき…?」
するすると下着の中に小さく納まっている翔ちゃんのそれをぐっと掴んだ。
「うぁっ……え、え?なに…」
困惑する翔ちゃんに構わず、空いた手で下着からずり下ろして可愛らしい顔を取り出した。布団で隠そうとする手を退けて、起き上がる体をベッドへと押し戻す。
「……僕に触られるのは嫌ですか?翔ちゃんが本当に嫌だったらやめますから」
もともと僕たちはまだキスしかしたことがなくて、その先のことは翔ちゃんには刺激が強いかもしれないと段階を踏みたいと考えていたところだった。
「何言って――」
おどける翔ちゃんに、冗談ではないと真剣に翔ちゃんの瞳を見る。
「っ……」
分からない、どうしよう、なんで、そんな風に唇が動いて、蒼のビー玉が困惑で揺れている。
「嫌かどうか、それだけでいいんですよ」
翔ちゃんの顔色は悪いどころか、真っ赤に染まっている。だったら、今までの僕と一緒できっと踏み切れないだけだ。
怖いことはしないって分かって欲しくて、翔ちゃんの先を優しく撫でて誘惑する。
「ね、これ、いや…?」
「う……や…じゃね、けど……」
小さく頷いて息を吐く。
普段から距離が近い分、今まで触れたことのない場所に触れるのは緊張が際立つ。
「――けど?」
続きを促す声が震えた気がする。
あぁ、翔ちゃんが嫌じゃないと言ってくれたのだから、僕はそれに答えなきゃいけない。
「……何、するかにもよるし…」
ロマンチックに雰囲気を出してその気にさせたわけでもないから、指の滑りがよくないのが気になって余裕もなかった。
「少しの間気持ちよくなるだけですよ。ごめんね、ちょっとだけだから我慢してね――んっ…」
早口でそれだけ言うと、翔ちゃんのものに顔を寄せて舌先を押し当てる。びくんと跳ね上がるそれに、熱がじんわりと伝わってくる。唇で食めば、そこはとても柔らかくてキャンディのように甘かった。
「ひっ……ふぁ……那月、それは……んん……」
翔ちゃんの胸をベッドへと押し付けて、先から根元から舐めあげていく。驚きでなのか硬直したまま時が止まってしまった翔ちゃんのものが次第に硬さを帯びて、気持ちよくないわけじゃないと口元が緩む。
「や、いやだ……ぁっ…んっ…なんでくちですんだよぉ……それは、だめ…だ…」
「んぅ、手はいいのにどうして口は嫌なの?」
率直な疑問を投げかければ、翔ちゃんは顔を真っ赤にして叫んだ。
「は、はずかしいからだろ!」
「…うん?僕は恥ずかしくないけど……どうして恥ずかしいの?手だろうと、口だろうと僕は僕ですよ?」
翔ちゃんはどう説明すればいいのか分からないのか、口をぱくぱくとさせるだけで言葉にはならなかった。
「うーんと、手よりは翔ちゃんの匂いとか味とか知られてお得ですし……」
僕が思ったままを口にしたら、翔ちゃんの耳がみるみる染まっていった。
なるほど、それが恥ずかしいのかと納得した。
「今はまだ僕のを知って欲しいとは言いません。でも、翔ちゃんのは知っておきたいんです」
触れることが出来る喜びを余すところなく伝えたくて、ちゅっちゅと翔ちゃんのそれにいくつものキスを贈る。
僕はこんなにも翔ちゃんに飢えていたのかと、抑えていた心が開放されたような気分だった。
「ぁ、あぁっ……んん、らって……ぁう、ん……変な声、出る……ぁ、あ、ぁっ…!」
筋張って浮き出る血管を一舐めすれば、翔ちゃんのものは僕の唾液でべっとりと覆われて薄暗い部屋でもキラキラと光った。
「変じゃないですよ。とってもかわいくて、気持ちいいのが分かるから……ね、もっと教えて…」
今度はとろとろと指に唾液を絡めて、ぽってりと熟れた翔ちゃんのそれをそっと扱いていく。
「ひんっ……あ、ぁ、あっ……んっ、なつ、なつき……」
ぎゅっと僕の服を引っ張って、涙が滲んでとろりとした瞳が僕を見つめてくる。ただ感じてくれるだけでも嬉しいのに、翔ちゃんの愛らしい声が聞ける幸せにごくりと唾液を飲み込んだ。
「はぁ……うん、気持ちいいね」
口でするよりかは恥ずかしさからくる焦りが減って、落ち着いているように見える。負担を掛けたくはなかったし、口でするのは控えた方がいいかもしれないと残念に思いながら少し強引だったことを反省した。
「……あ、翔ちゃんはこういうこと一人でしたことありますか?」
「はい…?んん……」
翔ちゃんの髪を撫でれば、汗でしっとりと濡れていた。
もう十分に大きくなってきたし、初めの目的であった体温も上がっている。
そろそろいいかもしれない。
「質問に答えて」
キッと睨みながらも翔ちゃんは諦めたように、吐息交じりで呟いた。
「……ない」
「本当に一度もない?」
「なんだよ……どうでもいいだろ……」
「それによってはコレをどうするか決めたいんです。翔ちゃんも早く解放されたいでしょうし……」
コレ、と言いながら先を撫でると、ふるふると連動するように体も震わせた。
「ぁう……ないって言った」
ぼそぼそと呟く翔ちゃんに詰め寄るように額をくっつける。大きく見開いた蒼い瞳が潤んで、それを隠すように伏せられてしまう。
「本当に?ちなみにですけど、僕はありますよ」
このあとも一人で処理するつもりだったし、そこは問題ではなかった。
くっつくおでこが一層熱くなるのを感じる。
翔ちゃんは息が苦しいのか、胸をぎゅっと抑えた。
「……うう……途中まで、ならある……」
「うん、何でやめちゃったの?」
「もーやだー……何この質問責め……」
「……翔ちゃん、イくとき辛くないかなって……今もほら…」
胸を抑える翔ちゃんの手を握れば、胸は大きく上下して早鐘を打つように鼓動が早かった。
「っ平気だ……空手で丈夫になったはずなんだ。サッカーで全力疾走したって問題ねえし、昔とは違う」
それは僕に言っているというより、自分に言い聞かせているみたいだった。
それで、翔ちゃんが眠れない原因がなんとなく分かった気がしたんだ。

定期的にベッドが揺れている。ダメそうなら早めに、という僕のお願いは叶えられそうにはなかったらしい、翔ちゃんの甘い囁きに落ちていた瞼をゆっくりと開けた。
「ごめんな、那月……気持ちよくシテ…?」
眉根を寄せながら、調理用のビニール手袋を渡してくる。
付き合うようになってから数年、この時期の睡眠は特に僕に頼りきりだとか、明日僕が朝から仕事があるだとか、色々と考えるうちに遅くなってしまったのだろうけれど、きちんと早めに終われる手段を提案しているのだ。
調理用手袋は、翔ちゃんが眠りについたあと色んなものを処理してからでは遅くなるから、僕が手袋を外すだけですぐに眠れるようにと翔ちゃんなりに考えたうちの1つだった。僕としてはあまり関係ないのだけれど、翔ちゃんがどうして欲しいかが分かりやすくて可愛らしかった。
それをつけながら、翔ちゃんを抱きしめるように引き寄せる。
「待ちくたびれて寝ちゃうところでした」
こういうときはしつこいぐらいねっとりとしてあげたいのだけど、そうは言っていられない。僕は本気になりすぎると離せなくなってしまうから。
「んっ、ごめん……ちゅ、ん…」
頬に唇に謝罪の言葉と共にキスが降り注ぐ。
「謝ってばかりですね。睡眠にマイナス思考は天敵ですよ」
ローション代わりに指を舐めようとすれば手を取られて、それを口に含める翔ちゃんに目を細める。
ローションは気持ちいいけど、シーツが汚れるからとあまり使いたくないようで最後までするときにしか使う習慣はなかった。
1本、2本と丁寧に舐って爪の裏先に舌を擦りつけては、密着する腰が微かに揺れる。
翔ちゃんはこの時期について僕の負担も色々と考えてくれている。でも、それがかえって僕を煽っていることは知らなかった。
「……も、いいよ。指入れてあげるから力抜いて」
なるべく淡々と、気分が盛り上がり過ぎないように努める。
「ん、」
顔を隠すように僕の胸に顔を押し付けて、大きく息を吐く。
「……明日、朝暇だから現場ついてく」
その緩んだ瞬間に、ついでとばかりに嬉しい予定を言われては翔ちゃんの求めるそこへ熱が篭る。
「僕は嬉しいですけど、無理してない?半日お休みみたいなものなんですから、翔ちゃんのやりたいこととかしたいこととか」
言いながら、きゅうと締め付ける肉壁を押し広げるようにまずは小さなそこを慣らしていく。幸い滑りは悪くはなくて、吐息に混じるようにくちくちとした水音が聞こえてくる。
「あっ……んぁ…っ俺が、したいこと……なんだからいい……」
最後まで触れることが出来ないときにまで僕を喜ばせないで欲しい。
「……うん、分かった。じゃあ、早く眠る準備しないといけませんね」
「あぁん、あ、ぁあ…………っんぁあ……」
翔ちゃんのいいところを押し上げれば、弾かれるように体を反らして、翔ちゃんの瞳と視線がぶつかった。
「気持ちいい?大丈夫、ちゃんとイくまでやめませんから」
もう1本の指を押し込んで2本の指で軽くピストンさせれば、僅かに首を横に振って滲んだ涙が頬を伝う。
「や、ぁあ……ぁん、ぁ、は、ぅう……」
「…いや?もう少しゆっくりの方がいいですか?」
熱い中を広げるように指に力を入れて、僅かに出来た空間でもう1本の指で引っかくように撫でてみる。すると、翔ちゃんは一際大きく体を仰け反らせた。
「ひいっ……あ、たま、しびれ……ぁぁあぁ」
気持ちよさそうに涎が垂れて、息をしようと開く唇から覗くぽてっとした翔ちゃんの甘い舌。つられるように溢れてくる唾液に、ずくずくと欲望が湧き上がってくる。どうにかやり過ごそうと視線を外せば、ぺたぺたと探るように伸ばされた手にぐっと顔を引き寄せられた。
「那月……んっ……」
名前を呼ばれて重なる唇に翔ちゃんから探るように熱い舌が舞い込んで来て、珍しいそれに理性が飛んでしまいそうだった。
「はぁ……ん…翔ちゃん、おっぱい舐めてもいいですか?」
「んんぅ、ぁっく……ぁ、あ、んっ……」
僕に答えるようにしゃくりながら、たどたどしくパジャマを手繰りあげる。色素が薄くほのかに朱を帯びる飾りが現れると、飛びつくように唇を押し付けた。肌に浮かぶ汗でしょっぱく、甘美的。その傍には縦に入った手術痕が白く浮き上がっている。翔ちゃんが16歳のとき救ってくれたそれは、翔ちゃんを今も縛っている傷だった。
ファンの子たちは翔ちゃんが手術を受けたことがあるのを知らない。翔ちゃん自身は必要であれば公表しても構わないようだけれど、事務所や周りの大人と相談して当面は伏せることになったこともとらわれている原因なのではないかと感じている。
でも、それでいい。今となっては、僕とさっちゃんだけが見ることも触れることも許されているのだから。
ピンと芯を帯びる飾りに唾液を絡めてこねてあげれば、顔を引き剥がそうと押し返されてしまう。
「や、ぱ……だめだ……胸、ちんこひびくぅ……んんぁあ……らめ、でちゃうからぁ…」
「我慢、は翔ちゃんに出来ませんよね」
「は、…ん……できるわけ、ねーよ……おまえ、容赦ねえし……ひぁあっ…」
小さなしこりを触るだけで、この小さな体から悲鳴に似た嬌声が響く。息はしやすいようにほんの僅かな休憩も挟みながら、翔ちゃんを高めていく。
「ふふ、ちゃんとみるくさん出ないようにイかせてあげますから、安心してお眠り――」
ぐっと指に力を込めれば、翔ちゃんの体が痙攣するようにガクガクと震えだす。
「なっ、んぁっ……もぉ……ぁ、ぁあっあぁあ――!」
チカチカとピントの合わない瞳が揺れ、体が大きくしなった。なるべく平静を保ちながら小刻みにびくつく体が落ち着くまで見届けると、深呼吸するようにスゥーと翔ちゃんの瞼が閉じていく。
これが学生の頃から今も続く、翔ちゃんの睡眠導入剤だった。
指をゆっくり引き抜きながら翔ちゃんのものに軽く触れて汚れていないことを確認する。しっかりと主張はしているけれど、後ろだけで達することが出来れば射精を伴わない絶頂を迎えることも難しくはなかった。感度が良くて快楽に弱い翔ちゃんに向いているのかもしれない。

手袋を外して翔ちゃんの胸に触れれば、力強い鼓動を感じることが出来る。
生まれた日は喜ばしいお祝いの日であるはずで、もう不安に思う必要はどこにもないのに。
(……那月の生まれた日でもあるわけで、存外甘えたがっているだけだったりしてな)
確かに翔ちゃんはお兄ちゃん気質で甘え上手ではないと思うけど、まさかそんな……。
さっちゃんの思いもよらぬ言葉にこみ上げてくる熱に唇を噛んだ。
僕ももう限界だった。
軽く翔ちゃんの服を整えて、ベッドが揺れないように慎重に立ち上がるとそのまま部屋を後にした――。

Congratulations!



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こんな翔ちゃんも有りかもってことで!この時期のなっちゃんは常に生殺しなので、誕生日はそれはそれは激しいものになることでしょう。
ジェミニちゃんお誕生日おめでとうございます!
執筆2015/05/24〜06/08