波のように

受けは翔ちゃんですが、音也はトキ音前提で当て馬に見えます。
つまり砂那翔前提、砂翔+音で3P風のNOT3P。お察しください。
なぜ砂翔+音なのかというと、リピなっちゃん11月のあの砂翔事件のシチュを使っているため。
詰めたいものを詰め込んで捏造してたらいつの間にかシリアスになってて長くなりすぎた。そして、やっぱりゲロ甘。
1時間で無事に帰ることが出来るのか…!?終始ヤってるだけ←結論
大丈夫な方のみ、ご覧ください。
↓スクロールしてね↓

「…んぁ…あぁ、あっ……砂月…はっ、ん…さつ…」
手を伸ばして砂月にキスをねだってみると、砂月は目を見開いた。
驚くようなことをしたつもりはないし、いつも砂月はそれに答えてくれるのに今日は違った。
砂月の頬に触れようとした手を避けられて、その手を砂月に掴まれる。
砂月は手の甲にちゅっと音を立ててキスしたかと思うと、顔を背けて俺と繋がっているものを引き抜いた。
「今日はやめだ」
行為を始めてすぐならともかく、挿れてから止めるなんて言われると思わなくて頭が真っ白になる。
「…それは、萎えたってことか?」
「違う」
「じゃあ、最後まで――」
ベッドから降りようとする砂月の腕を掴んで引き止めるけど、砂月は俺の腕を振りほどいた。
「とにかく……やめだ」
砂月はそのまま洗面所に消えていってしまった。
んだよ…!理由ぐらい言えっての!
イきそうだったのに直前でやめるとか…。
そういうプレイなら何度かやられたけど、ちゃんと最後までしてくれたし…マジ意味分かんねー!!
布団をかぶって悶々と考えてると、腹が立ってきてなんかもう完全に萎えてしまった。
もしかして俺に飽きたとか…?
いやいや、もしそうだったら砂月はそういうこと隠さないだろうから…違うはず…。

気づいたらそのまま那月のベッドで不貞寝してしまってたらしく、砂月はソファで寝ていた。
「…俺のベッド使えばいいのに」
遠慮なんてしない砂月が俺のベッドを使わないなんて、よっぽどだった。
本格的に嫌われたのかも…。
とりあえず、俺の布団を砂月にかけてやって、汚れたシーツや布団カバーを剥ぎ取る。
砂月とこういうことをする時は、那月にバレないようにちょうど変え時にしかしないことにしてるから、俺が勝手に洗っても何の問題もない。
洗濯機に詰め込んで、俺はさっさとシャワーを浴びる。
そうして、風呂から出て食事の用意をしてやって、さてメガネをかけて那月を起こそうと思った時にはっとした。
壊れてるメガネを見つけたからだ。

俺と音也はあるミッションのため、俺の寮の部屋の前に来ている。
そのミッションとは、那月の壊れたメガネを砂月から奪うことだ。
ただ、砂月本人は壊れたメガネを修理しようとする意思がないのか、俺が修理してくるから、と言っても渡してくれなかった。
だから、ここ1週間近くも砂月のままで、俺は那月が心配だった。
前にそれを見つけた時に奪っていれば、こんなことにはならなかったかもしれない。
ついさっきも1人で砂月に向かっていって、返り討ちにされて音也やトキヤたちのところに逃げ帰ったばかりだというのに。
砂月の声と吐息、耳をかじられた感触が残ってて、思い出すたびにそこが熱くなる。
結局、メガネが壊れる前の夜に、砂月に最後までしてもらえなくて嫌われたんだと思ってたけど、特にそういうわけでもなかったのか、こうして軽く構われることはあった。
それでもキスだけでそれ以上のことに発展することはなくなってしまった。
肩にぽんと置かれた音也の手で、呼ばれていたことに気づく。
「翔?…大丈夫?」
「あ、うん…そこに砂月が居るんだ、と思うとちょっと…」
俺と那月、砂月が付き合っているのはみんなには内緒だから、砂月が余計なことを言わないか心配なのもある。
「まーねー…俺も正直怖いよ。っていうかさ、翔が言ってダメなら、俺が言ってもダメだと思うんだけど」
「いやいやいや、ここまで来て一人だけ帰さねーよ!?それにいいんだって、居てくれるだけで心強いからさ!」
流石に音也も居るんだから、余計なことを言うかもしれなくても、変なことをされてあしらわれるようなことはないと思う。多分。
「…そう?」
「そりゃあ、もうすげー助かる!っていうか、居てくれないと困る!」
「うん、分かった。元々俺が付いて行くって言ったんだしね。よし、俺たちのチームプレイ見せてやろうぜ!」
音也が手の甲を前に差し出して、俺もそれに重ねて気合を入れる。
「おう!!」

そろーっと部屋の扉を開ければ、ベッドの上で横になっている砂月が目に入る。
しかも、よく見れば砂月は目を瞑っている。
もしかして、寝てるかも?と音也と顔を見合わせて、2人して人差し指を口元に立てて静かにしよう、の合図。
僅かの可能性も感じなかったけど、一応砂月が寝ていた場合の作戦も事前に立てていたため、お互いにすんなりと次の行動に移す。
イメージ上の泥棒がする仕草のように両手を前に構えて抜き足差し足で部屋に入り、扉はすぐ逃げられるように閉めずに開けておく。
この場合、砂月には近寄らずに、テレビや棚などの奥の方から探すことになる。
と言っても、逃げ道が遠くなるから、砂月が起きないように細心の注意を払って何の音も立てないことが大前提だ。
つまり目だけでメガネを見つけなければならないから、机の引き出しに入っていてもアウト、物の影に隠れていてもアウトになってしまう。
作戦としては全く成り立たないけれど、失敗した場合、ただの一般的な罰ゲームであるならまだしも、砂月が何をしてくるのか分からないのだから、それも仕方ないというものだ。
音也がメガネを見つけていないか、ちらっと確認すると音也は俺のベッドの下を覗いていた。
んなとこにねーだろ…。
そう思っていると、音也が俺の視線に気づいて手招きした。
口元はあれあれ、という動きをしてベッドの下を指差す。
え、マジで?と、口の動きだけで返して隣に並んでベッドの下を覗くと、そこにあったものは、那月が隠し持っていた玩具だった。
それもただの玩具ではなくて、大人の、いわゆる…アダルトグッズだ。
思わず思考が停止して固まっていると、音也が耳元で小さく言った。
「あれ、全部使ったの?」
全力で首を横に振る。これでもかってぐらい振っていると、シーンとした室内にばたん、という音が響いて、反射的に目を瞑って肩を萎縮させた。
ゆっくりと目を開けて音のした方に顔を向けると、扉の前に砂月が立っていて、今度はガチャリという音がする。
「こそこそ、こそこそ何してんだ?」
1歩、また1歩と近づいてくる砂月に音也と2人で後ずさる。
砂月を見張る係りでも決めてれば良かった…。
「お、お前こそ寝てたんじゃねーのかよ!」
音也と小声で、どうする!?今の音って鍵閉める音だよな!?ヤバイ、俺の命日今日かも…骨は拾ってくれよな…。おおい、即行諦めんな!!などと交わす。
「目ぇ瞑ってただけだ。…つーか、お前出てってから30分も経ってねえだろ。続き、ヤりにきたのか?」
砂月は俺のベッドの下から、アダルトグッズの一つ、男の性器を象ったバイブを手に取って、ん?と首を傾けた。
本当はさっきも逃げるつもりはなかったけど、みんなに報告する約束だったのもあって、その場に流されないように慌てて出て行ったのだった。
「んなわけねえだろ!!引っ張り出してくんな!!」
「あぁ、お前はこんなものより、俺のものを咥える方が好きだもんなぁ?」
「ちがっ、違うから!音也、なあ、マジで違うからっ!!」
音也もいるから大丈夫、なんて砂月には甘かったんだろうか…。
涙目になって訴えると、音也は若干目を逸らしながら言った。
「し、信じるよ!大丈夫、絶対誰にも言わないからっ…!」
それって全く信じてないってこと!?
それとも、俺と砂月がそういう関係だってことを…!?
あああ、もう分かんねー!!
「つーか、壊れたメガネどこやったんだよ!直してきてやるから。な?」
手の平を前に差し出して訴えるけど、膝が若干震え気味で腰がひけてる。
音也が居る前で変なことは出来ない…はず…。
「教える気はねえよ」
砂月はアダルトグッズを空いた手にぺしぺしと打ちつけながら歩いてきて、目前まで迫ってくる。
背後はもう洗面所から浴室へと繋がる扉と壁だけになってしまった。
洗面所に逃げ込んだところで、砂月に扉を壊されかねないから出来なくて。
「あぁ、そうだ、これから俺と楽しいことするってんなら考えてやらなくもないぜ?」
いいこと思いついた、というようにわざとらしく言う砂月の目は少しも笑っていなかった。
すっかり黙り込んでしまった音也を背中で庇うように1歩前に踏み出す。
「…内容による」
じりじりと近づいてきた砂月が俺の顎を掴んできて、俺はそのまま睨み付ける。
砂月は口角を吊り上げて、俺の耳元まで顔を寄せて囁く。
「セックスに決まってんだろ」
セックス、その一言で思い出される数々の恥ずかしいことが一気に頭の中を駆け巡って、体温を急激に上昇させた。
というか、お前…俺を抱く気なくなったんじゃないのかよ…!
そう思いつつも、少し嬉しいなんてどうかしてる。
それと同時に音也も居るのに自重しない砂月に頭が痛くなった。
「あ、ああああ、アホか!!いっぺん頭のネジ閉めなおせ!」
「俺は至ってまともだ。それにチビ、お前にたっぷりお仕置きできる良い機会だ」
むしろ俺にお仕置きさせろ!そう叫びたかったけど、ぐっと堪えると。
「…もしかして、それって、俺も含まれてるの?」
背後から聞こえた、ノー天気にも思える音也の声に肩がずり落ちそうになる。
首だけで後ろを振り返ると、逃げようとしたらしい音也の腕を砂月が掴んでいた。
セックスと言われた時点で、音也は他人事を決め込んでいたのかもしれない。
というか、音也だけでも逃げて助けを呼んでくれるだけで十分なファインプレーだ。
「当然だ」
そう言った砂月の顔を見ると、いつも以上に飢えた獣の目をしていて、俺は瞬時に理解してしまった。
音也が言った「俺も含まれてるの?」に対しての砂月の言葉。
それは行為に音也をまぜるということ。

部屋の扉やベッドから遠く離れた、洗面所から浴室へ続く扉の傍に敷かれた毛の短い絨毯の上で俺は四つん這いになっていた。
全部脱がされた服は辺りに散らばっていて、後ろには音也が服を脱がずに自分のものだけを取り出して、俺と繋がっている。
というのも、結局、俺たちは砂月から逃げられるはずもなく、那月のアダルトグッズの中にあった鎖がついた首輪を2人してはめられ、砂月の命令でこうなっているのだ。
両手は縛られていなくて自由だけど、首輪は南京錠式で自分たちで外せない。
鍵はここから離れたベッドの上に放り投げられてしまって、首輪の鎖は1メートル程度しかないためベッドまで届くわけもなかった。
砂月はというと、絨毯の近くに置かれた背の低いリビングテーブルの上に腰掛けてこちらを眺めていて、鎖が繋がれた三角の金具を手にしている。

俺と那月、砂月は俺の恋人で同じ寮の部屋なのだから、あの那月と砂月が我慢できるはずもなく俺は今まで何度も那月と砂月に抱かれている。
そのせいで、もう慣れてしまったそこは指だけでもイッてしまいそうになるほどに開拓されていて、音也の慣れない腰つきで軽く抜き挿しされるだけでもかなりクるものがあった。
それに1週間近くも砂月のままなのに、あの日以来、砂月は俺に迫ることはあってもキスだけでそれ以上は手を出してこなかったから、久しぶりに人から与えられる快楽に腰を揺らしてしまいそうだった。
声を抑える努力なんてとうの昔に諦めていたのもあって、音也の前でもそれは変わらずで。
というより、声を出すようにあいつらに調教されたと言っても間違いないかもしれない。
一応、なけなしの理性で少しでも声を抑えられてれば救われる…わけもないか…。
砂月との関係がバレただけでもダメージでかいってのに、砂月の命令とはいえ親友に犯されてるってマジありえねーよ…。
「翔の中、すっごく熱い…」
特に前戯があったわけでもないのに、ローションを使ってただ挿れられているだけでこうなってるんだから、自分の淫乱さに羞恥心で顔や耳だけじゃなく体まで熱くなる。
つーか、音也が勃ってるのは何でなんだ…。場酔い、とか…?
「…っ…ぁあん、…ぁ…ふぁ…ん……やぁ…」
「あ、ごめん…痛かった?」
音也は擦る力を弱めてくれるけど、別に痛くないし本当は気持ちいい。
でも、気持ちが、心がついていかなくて…。
なんで砂月は自分でしないんだろう。俺に触ってくれないんだろう…。
何の意味があって音也に……もしかして、これがお仕置き…?
…お前、別の男にヤられてる俺をどういう気持ちで見てんだよ…!くそっ…!
「ぁ、あぁ…ん、っ……音、也……ひ…っく…抜い、て…」
お仕置きされる理由も身に覚えがなくて。
「う、うん。痛いよな、ごめん…!」
音也は俺を気遣って抜こうとするけど、それを制止するようにジャラという音がして砂月の方に首が引き寄せられる。
涙目で歪んだ視界の砂月は眉間に皺を寄せているように見えた。
「どう見ても善がってんだろうが。いいからお前の好きに動け」
砂月はそう言うと顎を軽く上げて先を促す。
でも、音也はゆっくりと腰を引いていく。
「…こんなの…やっぱり、出来ないよ」
「じゃあ、お前はこれな?」
砂月はそう言ってテーブルに置かれてあった、男の性器を象ったバイブを手に取った。
「俺、やだよ…!そんなの挿らないっていうか、もう翔に挿れたんだから約束通りこれで終わりのはずだろ!?」
「まだお前らイッてねーだろ。つーか、全然色っぽくねえ。赤いの、お前…セックスん時、下だろ?」
「……!?」
砂月の言葉に驚いて音也の方を見ると、腕で顔を隠しているけど、隠れていない部分が赤くなっていた。
「どう攻められたら感じるか、知ってんじゃねえのか」
砂月が音也の傍でしゃがんで、ローションを手に取る。
「……なんで知ってんの…!?」
「どう動いていいか分かりません、っつー顔してるからな。下に慣れてる証拠だろ。ほら、ケツ出せ」
砂月がローションを指にとって音也の方に伸ばすけど、音也は叫んで正座するようにしてそれを回避する。
「ダメだよ!」
「ひゃあ…!」
その行動で、つるんと俺の中から音也が出て行った。
「あ、翔ごめん!…お尻いじったら絶対バレるもん!」
音也は自分の服を握って、赤面した顔できっぱりと言った。
音也がそう言うのを予想してたのか、元からそのつもりだったのか分からないけれど、砂月は音也を押し倒して、悲鳴を上げる音也の両手を頭上で束ねあげる。
「だから?」
「だから?じゃねーよ!!お前、俺の目の前で他の男なんか押し倒してんじゃねえ!」
危うく、音也はどんな風に男の下で乱れるのか、なんて興味を持っちまうとこだった。
「お前、怒ってんのか泣いてんのか、甘えたいのかどれかにしろ」
そう、音也を押し倒す砂月に俺は横から頬にキスをして首に抱きついた。
下で寝転んでいる音也を踏んだ気もするけど、頭がぐっちゃぐちゃで、自分でも体が勝手に動いたと言ってもいいぐらい自然に飛びついてて。
砂月は俺を胸で受け止めて、さっきまで音也と繋がっていた箇所に指を突っ込んだ。
冷たいローションがどろっと溶けてくるのが分かる。
「ひぁ…、砂月…んんん、はぁ…」
砂月の長い指が俺の中で動いて、いやらしい水音がくちゅくちゅと響く。
「あぁ…ぁ、あ、っ……ぅあ……あぁ、…あ、んぅ…」
ずっと砂月に触れてほしかったから嬉しくて夢中で砂月に擦り寄った。
「ここ好きだな、お前」
気持ちいいところを痛いぐらいに強く刺激されて、それに釣られて腰が揺れる。
「ぅあぁ……あ、ぁあ、あ……っ…うん…きもち……んは、ぁ…っ」

「翔、マジでエロ過ぎ…」
背後から聞こえた音也の声にどくんと心臓がはねる。
快楽の波に酔っててすっかり存在が飛んでいたけど、音也はいつの間にか俺の下から抜け出していたようで、急に音也が見てる前だと意識したら、羞恥心が一層俺をかきたててくる。
「…唆るだろ?」
そう言った砂月は指を引き抜いて、さっきまでいじっていたところを指で開いて音也に見せ付けた。
「砂月、やめ…」
そこを隠すように砂月の手に重ねるけど、砂月は気にも留めずに言った。
「もう1度挿れてみろよ」
音也は断るだろうと思った。
断ったところでどうなるわけでもないけど、断ってくれるだろうと思った。
「…え?いいの…?多分、俺、止まらないよ…」
さっきまで音也もあんまり乗り気じゃなかったし、俺に遠慮してたのになんで。
「あぁ」
そっとあてがわれたかと思うと、一気に奥まで入ってきて思わず砂月に抱きつく腕を強める。
俺の中の音也はさっきよりも大きく硬くなっていて、ただ無心に中を犯していく。
いつも砂月が乱暴に俺を抱くから、それと比べれば痛みなんて全くなくて快楽だけが体を駆け抜ける。
そうして、あっという間に達してしまった。
「あぁあぁああーー!!」
「うぁ…翔、早く…ない?」
俺がイッて締め付けたからか、音也が苦しそうに言った。
俺の精液が砂月の服を汚してしまったけど、そんなのはいつものことだから躊躇なんてしなかった。
「こんなもんだろ…こいつは早漏なんだよ」
砂月がそう言うと、音也はあっさり「そっか」とだけ返して、ゆっくりと動きを再開させる。
別に砂月が遅いだけで俺が早いなんて思ったことなかったけど、音也がそう言うんだからそうなのかもしれない…。
那月も遅い方だけど、なんていうかこいつら普段襲うのを全く自重しないくせに、変なところで我慢してる気がする。
だから、遅いんじゃ…、うわ、絶対これそうだろ…!
なんて思っていたら、また快楽がやってきて、でも、ただ気持ちよくても、好きな相手に抱かれてる時と違って全然満たされなくて、砂月の肩に顔をうずめて頭を振った。
「さつ、…ふぁ……も、」
もう嫌だって、こんなのやめてほしくて。
「……翔、俺のじゃ嫌だよね…ごめん…」
音也はそういうけど、言葉とは反対に腰の動きは速度を上げていく。
「あぁ…あぁあん…ぁ、んんっ……は、」
体がびくびくと震えて、ずり落ちそうだ。
「…ぁああっ……ぅう、砂月、さつ…」
そう呼ぶと、見ているだけだった砂月は俺の頬にキスしてくれる。
そこからちゅっちゅと、後ろに向かって移動して耳の辺りまで来ると砂月の吐息で頭の芯が痺れる。
耳たぶを甘噛みされると背筋がぞくっとして、身震いした。
その瞬間、中から音也のものが抜けて、熱い液体が俺の背中やお尻、足に飛び散った。
「…あー…すっげー気持ちー。俺、1回攻めていいかお願いしてみよっかなぁ…」
「初めからこんな具合善いわけねえだろ」
「あ、そっか…慣れるまですっごく痛いんだよね…まぁ、いっか。…っていうか、俺もイッたし、これで終わりだよね!?」
軽いノリでいう音也に、思わず悪態付く。
「…はぁ、…はぁ、…淡白だなお前…俺なんて傷心で今にも死にそうだよ」
「え、あ、そっか。ごめんね、翔。すっごく気持ちよかったよ」
「はぁ…!?!?恥ずかしげもなく、んなこと言うな!」
「なんていうか、俺も男同士でこういうことしてるってバレちゃったし、開き直ったら案外平気でさ。……それに翔ってばエロいんだもん…」
「…っ!!」
開き直ってるなら、そこで照れるんじゃねえ…!
お互いに顔を真っ赤にして黙っていると、砂月が鼻で笑った。
「赤いのは開放してやるよ」
俺は…?なんて、聞いても意味ないだろうし、砂月に色々文句を言うつもりでいたから特に何も言わなかった。
ただ単にお仕置きの意味が知りたいのもあるけど、砂月は俺のことをどう思ってるのかちゃんと聞きたい。
「付き合わせて悪かったな」
「え…?う、うん?」
俺さえも耳を疑うほどにあっさりと謝る砂月に、音也は困惑しながら手放された首輪の鎖をぶら下げてベッドに置いてある鍵を取りにいく。
俺の鍵も持ってきてくれて、砂月はそれを受け取ると難なく外してくれた。
砂月はどちらかというと道具をあんまり使わないタイプだから、実は煩わしかったのかもしれない。
「ちょっとシャワー借りるねー。あ、翔もシャワー浴びたいよね?俺あとでもいいよ?」
返事しようと思ったら、砂月がそれを遮った。
「後でいい。俺も入る」
「あ、そう?んじゃお先に〜」
何の疑問も持たずに洗面所に消えていく音也を見送る。

久しぶりに砂月にちゃんと抱きついたような気がして、抱きしめる力を強める。
こんなにも長い間、砂月だった期間はなくて那月がどんな状態なのか心配だけど、メガネが直ってそれを掛ければ那月はちゃんと戻ってきて俺を愛してくれる。
でも、砂月に愛してもらえないのなら、那月からもらえる愛だけじゃ俺はもう足りないんだ。
それは逆でも同じで、どっちかが欠けたらきっと俺はダメになる。
その仮定の話でも辛いのに、それ以上に今の状況が辛かった。
あの日から砂月はキスをしてそんな雰囲気になっても俺から離れていった。
砂月にちゃんと触れてもらえなくて、那月も居ないから俺は寂しくてたまらなかった。
「…一緒に入んの?」
「お前、まだ熱冷めてないんだろ?」
砂月はそう言うと俺のものを握ってくる。
「ひぁあ…!!待っ…んぁ…風呂でするの…あんま好きじゃない、からっ…んんぅ…」
やっと寂しさが埋まるんだって嬉しくても、お風呂は普通に入ってても、のぼせるから。
「他の男の匂いさせてる奴なんて抱きたくねえよ」
「おま……お前がっ、…ぁああ…ん、ちょ、…んはっ……させた、んだろ…!マジで勝手だな…!」
この前、俺がお願いしてもしてくれなかったくせに…!
砂月は那月よりは常識あるから、なんとなく考えてることが分かる方だけど、この前から全く分からない。
「王様が罰ゲームを受けるなんてルールはねえだろ」
「…んぁ……王、様…気取りか、よ……ふ…」
「……あぁ、お前は王子だったか。晴れて近親相姦だな?」
確かに俺は那月に王子と呼べ、なんて言ってるけど…その設定だと親子になっちまう…。
俺のものをいじる砂月の手を握って動かすのを止める。
「その発想何とかしろ…!俺は王子だけど、お前は別の国の王様!!!分かったか!!」
ガチャ、という音がしたと思ったら、音也の引くような声が聞こえる。
「タオル勝手に借りたよー…って、うわ、翔、何言ってるの…」
振り向くと15分ぐらいしか経ってないのにスポーツタオルを頭に乗せて、バスタオルを腰に巻いて出てきていた。
手には汚れた部分を洗ったのか、一部だけ濡れた制服を持っている。
すごい早業だ。
「あ、いや、こいつが、王子と王様で近親相姦とか言うから、どうせなら…さ…」
「へー。あ、でも王様の養子になるって手もあるよ!」
「それだと結局一緒じゃね?結婚――」
できない、そう言いかけて、俺は慌てて口をつぐんだ。
どっちにしろ男同士は結婚できないんだから、いくら望んだってそんなの無理な話だ。
もしかしたら、音也も考えたことあるのか、黙り込んでしまった。
砂月はため息を吐いてから、俺を肩に担ぎ上げて洗面所に入る。
「なんか着るもん要るんだったら、那月の服を使え」
小さく声を上げた音也に砂月は振り返る。
「それと、俺が王様なんだ。法律なんて変えれば済むことだろ」
「あ、そっかーじゃあ俺はその国の軍隊の隊長ってことで!」
ただの妄想だと分かってるだろうけど、音也はそれに乗って明るく返事をした。

砂月は部屋への扉を閉めると、俺を降ろした。
すぐに服を脱ぎ始める砂月に俺は抱きつく。
砂月は俺の頭を胸に押し付けるように抱き寄せてくれる。
「結婚なんて要するにただの紙切れだろうが。その歳で深く考える必要なんてねえよ」
そうだ、俺にとってはまだ先のことで、考えたこともなかった。
だけど、俺たちの誕生日の時に那月が18歳だから結婚のことを言われた。
その時は思いがけもないことで「俺は16になったばっかだから、まだ無理だろ!つーか、男同士なんだから出来るわけねーんだ!」なんて、言ってしまった。
「那月が言い出さなかったら、俺だってこんな考えねーよ」
考えて考えて、正式な夫婦になれたのなら、どんな時でもどんな理由があっても傍にいていい権利がもらえるのかも、なんて思ったら、自然に結婚出来たらいいのにって気持ちになった。
それだけだったらまだ良かったのに、一緒に居る時間が増えれば増えるほどその気持ちがどんどん大きくなって気づいたら好きで好きでたまらなくて、同時に那月もそう思ってくれたからこそ結婚のことを言ったのかもって嬉しくなった。
そう思うのに、こいつらはもう結婚できる歳だから、今はまだ俺が恋人だけど、男同士なんて脆い関係はすぐ破綻してしまうんじゃないかっていう不安もあって。
「だったら考えるな。那月だけを見てろ」
那月、だけ…。
やっぱり砂月は俺から離れていくつもりなのかもしれない。
「でも――」
砂月は俺を引き剥がしてキスで言葉を塞いだ。
薄く開いてた口の中に舌が入ってきて、舌を絡め取られる。
何度も何度も角度を変えて歯列をなぞるように動く舌に、頭がぼうっとして力が抜けていけば、砂月が俺の頭と腰を支えるようにして抱きしめてくれた。
さっきのお仕置きの意味も分からないままで、結婚のことだけじゃなくて、砂月のことにも不安ばかりが募っていたけど、砂月からのキス一つでこうも信じてもいいんだって気になってしまう。
というよりは、俺が那月と砂月を好きすぎて嫌われたくないって思うから、どんなことでも許してしまいそうになって、どんなことにでも一喜一憂してしまうんだと思う。
砂月の首に腕を回してすがりつけば唇を離されて、浴室に放り込まれてしまう。
「何すんだよ…!」
「このままだとここで挿れたくなるからな。あぁ、お湯沸かせよ」
軽く扉を閉められて、鏡に映った自分を見て失笑した。
あぁ、これは…流石にないわ…。
髪がボサボサだとかピンの位置がずれてるだけなら気にならないけど、音也と自分の精液が乾いて肌がカピカピになっていた。

適当にバスタブを洗ってお湯を溜め始めた頃に砂月が入ってきて、俺の少し後ろに腰掛けた。
よく那月とお風呂に入るっていうか入らされるから、大体のものは2個ずつ揃えてある。
例えばイスだったり、体を洗うやつだったり、那月の遊びに付き合わされた時用のPIYOちゃんのおもちゃだったり。
使わないのに俺用のシャンプーハットもあって、それにはなぜかウサギの耳がついているのに、那月のは普通の大人用だ。
流石に那月がこれを買って来た時は本気でバカにしてんのかと思った。
っていうか、音也に見られたんだよなこれ…。
うわあああ、恥ずかし過ぎるんだけど…!!
むしろさっき風呂から出てきた音也に何も突っ込まれなかったことが余計に恥ずかし…って、あんなことしたのに今更か…。バレちまったんだし…。
後で絶対、音也の相手誰か聞いてやる…!
あかすりの布を手にとって固形石鹸を泡立てていると、それを砂月に取られて背中をこすられる。
昔は痛かったけど、砂月は手加減することを覚えるようになったから今はそうでもない。
普段、俺が那月の頭を洗ってやったりするけど、どうやら砂月は俺の体を洗うのが好きらしく、砂月と一緒に入る時は大体洗ってくれる。
だけど、それには高確率で弊害もあった。
「あぁん……ん…っ…今はまだダメだって…」
砂月は泡立った石鹸を手にとって俺のものを扱った。
前屈みになって堪えていると、砂月の方に体を倒される。
凭れ掛かった状態で固定するように腰に手を回されて、起き上がろうともがくけど当然ながらびくともしない。
いつものことだから、こうなることも予想できてたし、砂月がしてくれるなら…。
そう思って諦めると、砂月は腰に回していた手を離して、さっきまで隠れていた秘所に指を挿れてくる。
せめて足を閉じようと思っても、体がびくびく反応して勝手に広げてしまう。
「…ぁ…あぁ…っ…ん、…はっ…ぁあ…あっ…」
指が乱暴に中をかき回すように動いて、入り口を軽く開かれれば、さっきのローションとかが垂れて来る。
中出しされた時はほぼこんな状況だけど、音也は直前で抜いたし、出るものはすぐ流れてしまう。
バスタブに溜めているお湯の湯気が立ち込めて浴室が暑くなってきたのも手伝って、体が熱くて溶けそうだった。
そう思ったのも束の間で、砂月は俺の手を掴んで俺のものを握らせてくる。
そこは石鹸と先走りでぬるぬるしていて、あともう少しでこの熱から解放されるところだった。
「ふぇ…も、俺出そうなのに…」
「だからだろ。イきてえなら自分でやれ」
砂月はそう言うと指まで抜いてしまう。
「……嫌に、決まってんだろ…」
「別に初めてじゃねえだろうが…ほら」
上から手を重ねられて、無理やり上下に動かされる。
「んぅ……」
見られてるのに自分でするのはまだ恥ずかしくて、息を止めてしまうからあまり好きじゃない。
それにさっきは音也でイッて、今度は自分でイけって…。
自分の気持ちいいところが分かるから、そこを刺激した時の快感が容易に想像できて、早く吐き出して楽になりたいって思う。
だけど、俺は好きな奴にしてほしいって思うから……イきたくなくて。
「…やぁ…さつ……んん、砂月っ……ふ…」
すがるように砂月を呼ぶと、砂月は俺の手を離してしまった。
「自分でしろ、つったろ?」
思わず離れていった砂月の手を掴んで自分のものを握らせてしまう。
また前みたいに途中で終わってしまうのかと思ったら嫌だった。
砂月は喉の奥で笑って言った。
「……どこがいいんだ?」
俺の一番気持ちいいところを知ってるくせに、砂月はもどかしく擦るだけ。
砂月の手に重ねて、先端の方を軽く握る。
そうしてくれたらイけるから…。
「ん…ぁ、…ここ…ぎゅって」
恥ずかしさを押し込めてそう言うと、砂月は軽く握っただけだった。
「ここ?」
わざとらしく言う砂月に焦れて、重ねた手の上から強めに握る。
「…っ……」
「何?ちゃんと言わねえと分からねえだろ?」
耳元で囁かれてリップ音が一つ。
砂月は俺が耳が弱いことを知ってるけど、それ以上に自分の声と色気が武器だということを知ってるんだと思う。
だからか、普段のあんな恐怖心を煽るような存在感からは想像もつかないぐらい、俺を甘く誘導するんだ。
「ふぁ……ん、……もっ、と……強く…」
砂月は俺の言う通り強く握ってくれて、痺れに似た強い快感が体を震わせた。
「んぁぁああーー!!」
俺のものを包む砂月の手に熱を吐き出して、それで受け切れなかったものが俺の手や辺りに飛び散る。
達してからも荒く呼吸をするたびにぴゅ、ぴゅっと飛び出て体が小さくはねた。
全身の力が抜けてだらしなく体を預ければ、砂月が手の平についた精液を見せてくる。
「お前1人でヤッてたろ?えっろいやつだな」
それは透明とはいかなくても真っ白ではなくて、ここ数日で何度もしている証拠だった。
1人でしても満たされないって分かってても、那月や砂月としている時を思い出して必死に抱かれた気分に浸りたかった。
「……お前が俺に触らないから…」
砂月に離れていってほしくなくて、俺はお前が好きだって、触ってほしいってそう思うから素直にそう言った。
体が…熱い……。

向かい合った状態で砂月のものを確認しながら、自分の秘所にあてがってゆっくりと腰を沈めていく。
お湯がこぽこぽと音を立てて、俺の中に少しだけ流れ込んでくる。
すぐのぼせてしまうから、ぬるめのお湯はバスタブの半分にも満たないぐらいしか入っていない。
「……んん…ぁ、あぁ…っあぁん…」
砂月は俺の胸の先端を唇でもてあそぶ。
空いた方の胸は手でいじられて、びくんと背筋を反らすと一気に砂月のものを飲み込んでしまう。
後ろに倒れないように砂月の頭を抱きこめば、砂月が背中に腕を回して支えてくれた。
俺の中の砂月が脈打って一層大きくなるのが分かる。
「…っ砂月…ぁあぁあ……ぁ、あぁ……んぁ…はっ…」
風呂にのぼせるのもあるけど、何より砂月にのぼせてるんだろうなって思う。
熱くて熱くて、気持ちよくて意識が飛びそうだ。
感度が増した肌にきつく吸い付かれて驚いて見てみると、しっかり痕がついていた。
那月は砂月の存在を知らないから、いつも砂月は俺に痕をつけないのに。
「ちょっ…砂月…!那月に…」
そういうと砂月はその痕に触れるようにキスをしてから、俺を抱きしめた。
「……もう那月は俺の存在を知ってるし、今も俺の中からお前を見てる」
「…え?…いつ、から…」
「メガネを壊す前」
壊した…?砂月が?
つーか、音也とのアレも見られた…?
「ちゃんと説明しろよ」
「……那月が俺の存在に気づいたのは、あの日…俺がお前を抱いている時だった。初めは那月自身がお前を抱いているんだと錯覚してたらしいが、お前が那月以外の名前…俺の名前を呼んだことがきっかけで那月は引っ込んでしまった。メガネを壊したのは那月が引っ込んだことを悟られねえようにするためだった」
続けて砂月は「…あぁ、砂月という名前も俺のことを認識する手伝いになったのかもしれねえ」と独り言のように呟いた。
砂月が俺を離したかと思うと、ふっと笑ってから困った顔をした。
「…続きは僕が話しますね」
それは那月の表情で、那月の声音と口調だった。
「僕って、酷いんです。さっちゃんは僕を守ってくれるために生まれて、ちゃんと守ってくれてたんだって今になって分かることがいっぱいあって、さっちゃんを大好きになった。でも、そのさっちゃんが翔ちゃんを抱いてるなんて許せなかった…。だから、さっちゃんに翔ちゃんに触れないでってお願いした。それで、どれだけさっちゃんが僕に誠意を見せてくれるのか見てたんです。でも、やっぱり…僕は翔ちゃんに触りたいから、さっちゃん越しでも翔ちゃんを感じたくて、少しだけ触れることを許した…」
那月は俺の頬を撫でて、指で唇に触れて軽く重ねるだけのキスをした。
「勝手でごめんね、翔ちゃん…ずっと1人で慰めて我慢してくれてたんだよね」
カッーと耳まで赤くすると、那月は愛しそうにそっと俺のものに触れた。
普段の俺なら1週間程度で我慢できなくなることはないから、やっぱりあの日砂月が最後までしてくれなかったことと、那月に会えなかったことが大きかったんだと思う。
「…ん……音、也のは…」
那月は手を離して、真剣な表情を浮かべる。
「…それも僕の指示です。僕はさっちゃんが翔ちゃんとえっちするのも嫌なのに、音也くんにやらせるなんて…軽蔑しましたか?」
「……お仕置きだっていう理由は…?俺はそこが知りたい」
「…翔ちゃんが……僕以外の人を愛してるなんて許せなくて…ああやって、さっちゃんも一緒に傷つけばいいって思った。…ね?音也くんまで利用して傷つけて…僕って酷いんです」
「………それは、お前だけが酷いんじゃねーよ」
俺にとっては那月と砂月どっちも大好きで、捉えようによっては砂月は那月だって思う。
でもそれは、俺がそう勝手に考えてるだけであって、那月にとっては自分の中の別人格でも、突然現れた他人のようなものなのかもしれない。
そう考えれば、例え那月の体でも、その本人が砂月を知らないのをいいことに別の男と浮気していたのと同じだ。
そんなの那月が怒るのも当然だった。
それでも俺は…。
「俺はお前の言う通り、砂月を…愛してる。でも、那月も同じように愛してる。どっちが上とか…ない」
那月の肩に顔をうずめる。
「お前だけを愛してやれなくてごめん…」
もしかしたら、砂月だって自分だけを好きでいてほしいのかもしれない。
俺こそ、お前らに酷いことしてるんだ。
那月は俺の頭に手を添えて、背中をぽんぽんと叩く。
「…ねえ、翔ちゃん。近親相姦って言ったの覚えてる?」
王様と王子の…?
「…うん?」
「あれね、僕が言ったの。さっちゃんにそう言ってって」
通りで砂月にしては突飛だな、と思ったはずだ。
那月は俺を真正面に据えるといつもの笑顔でふんわり笑って、俺の心臓辺りにキスをした。
「恋愛っていう不確かなものだけに頼らなくても、確かな絆がある親子の方がいいなって、そうしたらさっちゃんに嫉妬なんてしないかもって思ったんです。でも、それは翔ちゃんが結婚願望がないと思ってたから。だから、僕は嬉しかったんです。ちゃんと僕が言ったことを考えてくれてたって分かって。…さっちゃんはただの紙切れだって言ったけど、僕は役所に届けられなくてもちゃんと書いて持っていたい。いつか日本でだって、男同士でも結婚出来るかもしれないでしょう?だから、その時になったら1番乗りで出しに行きませんか?」
それは那月だけを愛せない俺でもプロポーズしてくれたってこと。
そう思ったら、勝手に涙がこぼれてきて止まらなかった。
那月は俺と額を重ねると、親指で俺の涙を拭いながら言った。
「ただの紙切れでも、確かな証になるのなら僕はそれが欲しい。僕が抱えていた不安と翔ちゃんも感じてくれた不安は同じだと思うから。僕たちが大好きな翔ちゃんと、翔ちゃんも大好きなさっちゃんとずっと3人一緒に居られたらいいなって思うんです。…ダメ、ですか?」
「…ひっ…く…那月と砂月、どっちも…俺が好き?」
俺が一番確認したかったことを遠まわしに聞くと、那月はあっさりと汲んでくれた。
「……ちゃんとさっちゃんも翔ちゃんが大好きだよ。僕のせいで勘違いさせてごめんね」
どっちかが欠けたらダメなんて俺は本当に酷い奴だと思う。
でも、那月は砂月も許せるんだろうか…。
それに砂月は那月をどう思ってるんだろう…。
少し不安な顔をしていると、那月が苦笑した。
「ふふ、さっちゃんは翔ちゃんが言いたいことが分かるぐらい好きなんですね」
首を傾げると、那月は砂月がつけた痕にキスをして言った。
「今のでも嫉妬しちゃいそうなぐらいですから、僕はまたさっちゃんに嫉妬するかもしれません。でも、翔ちゃんが大好きなさっちゃんだからこそ、僕もさっちゃんを大好きになれないわけないんです。だから、その証明とお詫びを兼ねて…」
那月が鋭い目つきに変わったかと思うと、顔を近づけて俺の涙を舐めとった。
「…泣くんじゃねえよ」
それは砂月の声だったから。
「砂月は俺が好き?」
ちゃんと砂月の声で聞きたくて、嫌われてないんだって実感したくて、那月に聞いたのにまた聞いてしまう。
砂月は目を細めて俺の耳に口元を寄せると、ちゅっとリップ音を立てて甘く囁いた。
「……愛してる」
俺が聞きたかった言葉以上のもので、心臓がはねた。
じわーっと胸の辺りから熱いものが広がったかと思うと、俺はそのまま意識を手放してしまった。

目が覚めたらそこは自分のベッドの上で、横から風が吹いてくる。
その先に視線を移せば、うちわで扇がれていた。
額に手をやると自分の体温で温かくなりかけているタオルが乗っていて、のぼせたことを知る。
「砂月…?」
「…話するんだったら、さっさと出てればよかったな」
ベッドに腰掛ける砂月に抱きつこうとしたら、頭がふらっとする。
「まだ寝てろ」
砂月にそう小突かれて、ベッドに倒れてしまう。
那月にプロポーズされて、砂月もああ言ってくれたことがどこか夢心地だったから、砂月の体温を感じたかった。
というか、那月にちゃんと返事してない…。
これだと俺は砂月のことばかり気にかけて、那月のことを考えてないみたいじゃねーか…。
「那月は今居るか?」
砂月が俺の額から落ちたタオルを冷水で絞り直しながら言った。
「あぁ。心配してる」
寝転んだまま目を閉じて深呼吸して、ゆっくり目を開ける。
「俺…もさ、ちゃんとサインするから……その、婚姻届ってやつ?」
砂月が絞ったタオルを俺の額に乗せると、俺の髪を撫でながら言った。
「んなもん、言われるまでもなく当然のことだろ。…つーか、のぼせてぶっ倒れてんのに、それ以上顔赤くしてどうすんだ。死にてえのか?」
そりゃあ、緊張するだろ…!
「折角俺が――」
「まぁ、もしお前が死んだり、那月を手放すようだったら、地獄の底まで追いかけてやるから覚悟しろ」
砂月の言葉に心臓がはねて、また顔が熱くなった気がした。

fin.



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後日、なっちゃんはちゃんと音也に謝っていると思います。
リピなっちゃん11月のあの砂翔事件のネタバレ反転↓+リピレン父<c潟Aル?の那翔部分のネタバレも。

耳たぶかじられ逃げ帰ってきた翔ちゃんを再度送り出すトキヤに噴出し、音也と2人でさっちゃんが居る部屋に行って1時間も何してたんだお前ら!3Pか!3Pなのか!?!?と興奮していた結果、その設定だけを使った全く別の小説がこれになります。確実に1時間では帰れません。
あと、リピレン浮フメモリアルで、翔ちゃんが大浴場でのぼせてなっちゃんがお姫様抱っこ(記憶違い?)で連れ出したっていう小話があった気がするんだけど、大浴場で何をしていたのかな?君達^p^っていう方向にしかいきませんでしたね。公式あざます…!

相変わらず、アホなことしか言わないあとがきですね\(^o^)/
執筆2012/02/07〜11