もいすすん  そくすにとかもちと

公式ツイッターネタ。超甘々で砂翔も少し。前に那翔誕で書いたMOON STONEの設定を使っていますが、たぶん読まなくても大丈夫だと思います。
前の話がR-15までなので、そんな感じに収めておきました。
大丈夫な方のみ、ご覧ください。
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シャイニング事務所のクリスマス限定、Twitter企画。
Twitterとは、世界中の幅広い世代から情報発信・交換の場として活用されている、お手軽なコミュニケーションツール、だそうだ。
そのツールを使って事務所の所属アイドルたちが一日限定で、些細なことだったり、ファンへ向けての言葉だったりを呟くというもの。
俺は以前、ドラマの役者としてコメントを呟かせてもらったことがあるなど、多少は使い方を知っている。
藍に教えるのはともかくとしても、那月に教えるのを苦労しているよそで、セシルがフライングして呟いたのが目に飛び込んできた。
この企画はクリスマスイブ――つまり、24日のみ。使い方を覚えるうちに間違えたんだろうな、と微笑ましく見ていたら、音也が即行でリプライをしていて、藍が「ハプニングを装ったサプライズだったんじゃない?まぁ、セシルはちょっと抜けてるから本当のところは知らないけど」と言っていた。
なるほど。ファンには見えないから、打ち合わせすればそういうことも出来るわけだ。
それは頭の片隅にでも留めておくことにする。

クリスマスイブ前夜。
風呂上りにリビングにあるこたつに篭り、みかんをお供にノートパソコンで今か今かと送られてくるたくさんのメッセージを眺める。
『早く呟いてー!翔ちゃーん』
『翔くんの呟き楽しみにしてます!大好き!』
『シャッフルCD、すっごくよかったよ〜』
『どうして翔ちゃんはそんなに可愛いんですか?』
ぷ、那月みたいなコメント発見。
前に実習授業でブログをやっていたことはあるけど、コメントは仲間うちだけだったし、リアルタイムで生の声を見れるってのは、ライブと似た感じでいいもんだ。
音也が一日限定にしなくてもいいのにって言ってたけど、那月なんかはうっかり一緒に風呂入っただの、寝ただのと呟いてしまいそうだから、正直助かった。

みかんを取ろうと手を伸ばせば、短いはんてんの袖から腕が晒され、刺すような冷たい空気に身を震わせる。
風呂から出たばかりで体が温まってて油断した。
先にリモコンで暖房を入れて、小さなみかんの皮を剥く。
煎餅もいいけど、やっぱこたつにはみかんだ。
そう思いながらも、白い筋を取るのが面倒で、そのままひとかけらを口に放り込む。
酸味は僅かにもなく、強い甘みが喉を潤していく。
甘い、と言えば。
パソコンの傍には俺が今年の誕生日に砂月にやったプレゼントである、クマのスタンドライトがあって。
それは茶色い傘の部分がクマの顔で、耳がちょこんとくっついているもの。砂月にあげたとはいっても、那月の部屋に合わせて選んだやつなのに。
聞けば、砂月は可愛らしいものに囲まれたお前を見るのが那月は好きなんだよと、悪びれることもなく言った。
どっちにしろ、那月は帰りが遅くなることが多くて、先に帰ってる俺の部屋に帰ってくることが多いから、那月の部屋に置いておくよりも使用頻度が高くなってはいるんだけど、砂月は相変わらず那月に甘いというか、那月中心過ぎると言うか。
って、スタンドライトだけじゃなくて、ソファに転がっているクマのぬいぐるみやら、ピヨちゃんのブランケットやら、なんやらを許容してる時点で――。
特に必要もないのにそのライトをつけてみれば、ノートパソコンの画面に反射する光でファンからもらったメッセージが霞んでしまう。
柔らかい光に暖房の熱、こたつの温もりにのぼせるように体がぽかぽかしてきた。
あぁ、もうすぐ始まるのに。

「そろそろスマホも使ってみたいんだけどなー」
「僕、使いこなせる自信がありません」
様々な携帯電話の機種を見比べ、どの色にするか、形や柄、ボタン配置はどの会社のものがいいかを那月と話し合う。
俺たちは遊園地で壊れてしまった那月の携帯電話の買い替えと一緒に、再度おそろいにするために自分の携帯電話の機種変更をしに携帯ショップにやってきていた。
ボタン配置は前に使っていたものと同じ型にした方が那月が使いやすいだろうから…。
「そうじゃなくて、前から仕事用のを買うのもありかなって思っててさ。レンにも言われたし」
「レンくん?」
「ほら、芸能人のかばんの中身チェックって、少し前に流行ってたじゃん。あれって、マネージャーが一つ返事で受けちまって、タレント自身は聞いてないことが多いらしいんだよ。まあ、世間におそろいがバレたって、前みたいに一番新しい機種にしただけだ、とか、教えやすいから、とか言い訳はいろいろ出来るんだけどな」
マネージャーや事務所の仲間も、スタッフだって俺たちの携帯電話がおそろいなのを知ってる人は割と居るし、また同じのにしたらそれはそれで怪しまれそうで。
本当は、壊れたり、失くしたり、おそろいのリスクというものは付き物だって、この前のことで痛いほどに分かったから、別々の方がいい気もするけれど、そんな簡単なことで喜んでくれる那月を思えば、出来る限り考えてやりたいから。
俺だって那月に甘いって分かってるって。

「――ちゃん、翔ちゃん」
軽く肩が揺すられ、重い瞼を擦る。
腕に頬を乗っけたまま見上げれば、那月の心配そうな顔。
「こたつで寝ると風邪引いちゃいますよ?」
「んん……平気。おかえり、那月」
それだけ言って、空いた手を伸ばして那月の頭を引き寄せる。
迷わずに那月の唇に自分のそれを重ねて、それだけでは終わらない深い口付け。
「ふっ……ん…」
外から帰ってきたばかりの那月の頬は冷たくて、温めてやるように頬に手を添え、熱い舌をすり合わせる。
上体を起こしてみれば、那月が押し倒すように迫ってくるから、今は何時だと横目でパソコンの画面を見れば、23時56分の文字が目に入った。
慌てて那月の胸を叩いて唸る。
「んー…!ぷは、12時!始まる!」
奥に押しやっていたノートパソコンを手前に移動させる。
リプライ画面には寝てしまっていた間に何千件ものメッセージがきているとの文字が表示されていた。そこをクリックしてみると、一気に読み込みが始まってしまって砂時計がぐるぐると動き出す。
「わーたくさん来てますね〜!ふふ、翔ちゃんは本当にとっても小さくて可愛いですよね!あ、僕とのデュエットですか〜?僕もまたしたいんですけど、翔ちゃんがOKしてくれないんです…みんなで翔ちゃんを説得――」
「説得されたってしてやんねえけどな」
そう言えば、途端に那月が頬を膨らました。
お前は俺のライバルなんだから、競い合っていきたいんだっつーの。
「それよりも、そうやって自分に来たメッセージ全部に返事でもするつもりじゃねえだろうな」
砂時計は無視して、さっとホーム画面に戻り、キーボードを打ち込んでいく。
タイムラインにはすでに寿先輩と音也のツイートが表示されていて、完全に出遅れてしまっていた。
「文字を打つのはまだ慣れていませんから、心の中でお返事します!」
心の中ってか、俺にはだだ漏れることになりそうだけど。
「ん、そうしとけ」
「ちゅっ。メリークリスマスです!翔ちゃん!」
言っている間にも、那月から頬へとキスが降り注ぐ。
「おう、メリークリスマスーって、ちょ、くすぐったいっつーか、変な気分になるからやめろ」
無理やり那月の顔を引き剥がせば、那月が小首を傾げて微笑んだ。
「それって、どんな気分ですか〜?」
そうやって分かってるくせに、那月は分かってない振りをする。たまに、本当に分かってないこともあるけど、これは絶対違うって分かり過ぎるほどに分かる。
「ま、まだ業務時間内、だろ!」
「そうですね、業務時間外までにお風呂に入ってきます!明日はお休みだから楽しみだなぁ」
「オフつっても、ツイッターもあるんだし、クリスマスパーティだって予定してるんだから、んなことやってる余裕ねーぞ」
叫んでも聞いていないのか、那月はこの時期にCMでよく聞くクリスマスソングを鼻歌に、洗面所へと消えていってしまった。
風呂から上がって何も呟かないまま、事に及ぼうとは思っていないのか、ちゃんとノートパソコンを持ってきていたようで、それを俺のパソコンの隣ではなく、向かい側に置いておいてやることにする。
隣に座られでもしたら、那月はあらぬところを弄ってくるはずだ。生かさず殺さず、言葉通りの生殺し状態なんて真っ平ごめんだった。

みんながパソコン前で待機してたわけではないのか、ツイートがゆっくり流れていく。
俺と音也の話題にセシルが申し訳なさそうに反応してて、どうやらあれはサプライズではなさそうだった。
主にトキヤを振り回す筆頭である音也は、年下であるセシルに対しては良い意味で構っているのを良く見かける。
セシルに日本のことを教えてやってるみたいだし、俺が那月を放っとけないのと似てるような、似てないような。
那月はわざとそうしてる節がなくもないのがアレだけど。

ただ画面を眺めているだけで過ぎていく時間が早くて、セシルが寝たのをきっかけに先輩たちのツイートが始まった。
しばらく見ていようと、もう一つみかんを手に取る。
そういえば、さっき携帯電話を買い換えるときの夢を見た。
現実にあったことの夢を見るのは珍しい。
あのときは一緒に選ぶだけ選んで、俺が買ったのはスマートフォンだけだった。シンプルな黒のデザイン。那月はガラケーと呼ばれる普通の携帯電話で、俺はわざわざ別の店で同じ機種のものを買った。
那月が一言「僕も翔ちゃんと一緒のにします」と言うだけで、不思議と変な感じには捉えられない気はするけど、俺たちの関係を知るレンに気をつけろと言われたのもあって、少し過敏になっていたんだ。
色は前よりは明るく薄めのゴールドで、那月はピンクパール。
女っぽすぎないか?という問いには「翔ちゃんのほっぺたみたいで可愛いでしょう?」と意味不明なことを言われた。
そうやって笑う、お前のが可愛いよ。

風呂から上がってリビングに戻ってきた那月は俺がプレゼントしたムーンストーンのイヤリングを見せるように、少しだけ伸びた髪を耳に掛けていた。
失くしたら嫌だからと、あまりつけなくなってしまったそれは、今では、誘いの合図になっていて。
偶然、スタジオで会ったときにさり気無く見せられることもあって、その後、仕事中に思い出して居たたまれなくなるからやめてほしい。
向こう側にノートパソコンを置いてやったのに、那月は隣に座ろうとしてくるから小さなこたつの片側を陣取るように腕を広げる。
「ダメだっつーの。お前はあっち」
「邪魔しないから、いいでしょう?」
相手にしてたらついつい許してしまいそうで、無視してパソコンの画面を見ると、月宮先生はいつも通りで、やっとレンも参戦する気になったようだった。
にしたって、挨拶よりも先に、聖川にちょっかい掛けるって。
「ね、寒いです…!僕もこたつに入れてください」
「んー…あっち側に座ればいいだろ〜」
ぽつぽつと色んな人のツイートが増えてきて賑やかになってくる一方、夜も遅いから寝る人も増えてきた。
「――あ、日向先生!」
すかさず、カタカタとキーボードを打ち込んでいく。
「翔ちゃーん、ぎゅ〜〜!」
「ハイハイ」
横から首に抱きつかれて、珍しく自分できちんとドライヤーで乾かしたらしい髪がふんわりと頬をくすぐる。
力いっぱい引き剥がそうとしたら、思っていたよりもあっさりと那月の腕が剥がれた。
「ほら、いい加減、お前もなんか呟いてみろよ。楽しみにしてたんだろ?」
指差して言えば、頬に軽くキスされたかと思うと、那月はすんなりと向こう側に腰を下ろした。
だから、煽るなと頬を拭っていると、一本指でキーボードを押す手がちらちらと目に入る。
なんというか、それさえも煽ってるように見えるんだから重症だ。
いや、実際、やる気満々のようだからそうなのかもしれないけど。
そうして、やっとで打ち込まれた那月のツイートは奇怪な文で、思わずキーボードを打ち鳴らす。
あの有名なゲームの復活の呪文に見えなくもないそれに、那月はあれ〜?と首を捻った。
「お前、なんて打ったんだ?」
「なんて打ったと思います〜?」
「も、もいすす…ん…?そくすに…とか、もちと?餅くいたい、なわけねえよなー」
「翔ちゃんがつれません、です!」
「は?あぶねー何呟こうとしてんだよ!」
「ふふ、驚いた?本当はメリークリスマス、です!」
那月が微笑んで、再びぽちぽちと文字を打つ。
メリークリスマスと打とうとして、どうやったらあんな暗号みたいになるんだ。
タイムラインに流れてくる音也の突っ込みや寿先輩のボケに、那月はまた解読不能な文をツイートした。
それに対して、トキヤが冷静にかな打ちになっていると指摘する。次いで、那月の携帯電話からシャンシャンとトナカイのソリを思わせるような曲が流れ出す。
曲名はそのまま『ピヨちゃんクリスマス』で、耳にたこが出来そうなほど寝起きにも聞いている曲だ。
「はぁい!トキヤくん、お待たせしました!………はい、お願いします!え〜っと…?右下にあ、なんてありません!……?よく分かりますね〜、トキヤくんの言う通り、Aってなってます!クリック…クリック……ダメです、ぜんぜん反応しません…」
那月に口で説明するのは難しいだろうな…。
こうすれば文字を打てると認識していたものが、突然出来なくなるってのは、その出来なくなってる理由が理解できなくて、すぐに壊れたとか――。
「もしかして、壊れちゃったんですか?」
ほれ見ろ。
流石にパソコンともなると一朝一夕にはいかないだろうけど、根気よく教えた方なのに。
キーボードを打ってツイートしてみれば、日向先生から返信が来てビクつく。
未だにメールや電話が掛かってきたときだって嬉しい反面、身構えてしまう。
憧れの存在が憧れのままで居てくれるってのは本当にすごいことで、ファンの夢を壊さないってのは当たり前にしなきゃいけないことなんだと考えさせられる。
でも、トップアイドルになるって夢のこともそうだけど、俺とっては仕事もプライベートも那月が居てこそ、よりやる気になれる部分があるのは確かで、社長に関係を認められている限りは精一杯頑張るだけだった。
「……トキヤくん大丈夫ですか?唸ってばかりですけど………そっか、よかったぁ…え、僕だってメモ帳ぐらい出せます!」
言いながら、那月が立ち上がってノートパソコンを俺の方へ向けてくる。
なに?と口ぱくで聞けば、那月は「よね?」と続けた。
自信満々で出せると言っといて、俺にメモ帳を出せってのか。
仕方なくメモ帳を出してやってる間に、那月がぴったりと隣にくっついてくる。
お前な、ともう一度唇だけで動かせば、那月は人差し指を立てて微笑んだ。
ここで俺が操作してやったら早いけど、折角トキヤが頑張ってくれてるんだし、もうちょっと那月を頼もう。
それで那月が覚えてくれるなら万々歳だ。
「よね…って?あの、四ノ宮さん?メモ帳は、出せましたか?」
那月が持っている携帯電話から、困惑するトキヤの声が聞こえてきて苦笑する。
「はぁい、出せましたよぉ〜これからどうするんですか?」
「では、右下のAだった箇所が、あ、になっているか見てください」
「なってます!」
「その、あ、からカーソルを順に右に合わせていくと、ツールという文字が出てくるのですが、それをクリックしてください」
横から那月のパソコンを覗き込んでいると、ちょうどトキヤが指定したボタンをクリックしそうなときに手元が滑ったのか、ブラウザをクリックしてしまった。
「トキヤくん、またAに戻ってしまいました!」
「はい?ええと、では、もう一度メモ帳をアクティブ…、メモ帳に戻す…?いえ、メモ帳に、してみてください」
説明に苦労しているのが伝わってきて、また小さく苦笑した。
さっきと同じように那月は『あ』から順にカーソルを動かして、ツールという文字が出た途端、カーソルが上に動く。
「あれ〜?またAに戻っちゃいました」
も、もしかして、ツールという文字自体をクリックしようとしてる…?
ダメだ、笑っちまう。
そう思った瞬間、盛大に噴出してしまって、トキヤの「翔!?居たんですか!?」という声が飛び込んでくる。
笑い事じゃありませんよ、とため息を吐くから、那月が持つ携帯電話に耳をくっつけた。
「や、悪い悪い。那月が泊まりに来ててさ、俺、さっきまで二階に居たんだよ。そんで、様子見に来てみたら、上に表示されたツールって文字を押そうとすんだぜ。笑うしかないだろ」
ちょっと言い訳臭かったか?
「相も変わらず、仲のいいことで。さきほどのツイート。宇宙人かと思ったって、翔、あなた、四ノ宮さんと一緒に居すぎて、影響されているんじゃありませんか?」
途端に那月が嬉しそうに携帯電話を押し付けてきて、かばんから何かを取り出してくる。
「え?そうか〜?まあ、そんなことより頑張って教えてやってくれ」
那月に携帯電話を返そうとすると、ばっと黄色い布を広げてそれを俺の肩に掛けてくる。
フリース素材で出来た布地にはフードがついていて、そこにはピヨちゃんの顔が書いてあるポンチョだった。
那月はパジャマだけしか着ていないから寒そうでそれを押し付けると、俺がそうするのが分かっていたかのように那月は自分の分のポンチョを取り出して、ふにゃりと笑った。
暖房をつけているのもあって、俺自身は少し暑くなってきたとこだったんだけど。
「……仕方ありませんね。キーボードにカタカナ、ひらがな、ローマ字、と書いてあるキーがスペースキーの近くにありますので、Altキーと一緒に押してみてください」
「へえ、そんなやり方でもいけるんだな。最初からそっちの方が分かりやすかったんじゃねえの?」
「キーの同時押しなど忘れやすいでしょうし、文字を見ながらの手順を踏んだ方が覚えやすいかと思ったのですよ。それでは、翔、携帯の充電が切れそうなので、後はよろしくお願いします」
「おう、さんきゅ!」
「トキヤくん、ありがとうございます〜!」
通話を切って携帯電話を置くと、今度は那月がはんてんを脱がそうとしてきた。無理やりにでも着せたいらしい、ポンチョの袖を通すように促してくる。
もうめんどくさいからその通りにしてやって、操作を全く覚える気がなさそうな那月に、同時に押すキーボードのボタンを指示する。
「那月、これ押しながら、これ押してみ」
そうすれば、ローマ字入力に変更しますか?というウィンドウが出てきて、はいをクリックする。
上手くいったようで那月が軽快にキーボードを鳴らし始めた。
あんまり気にしたことなかったけど、どうやら那月は英語は一本指で確認しながら押すタイプらしく、その次のツイートでは普通にいくつかの指を使ってタイプしていた。

那月がおもむろにピヨちゃんのフードを被せてくるから、それを取る。
「着てやってるんだからそれで満足しろ」
「嫌です〜!ちゃんと被って、やっとピヨちゃんの完成なんですよ〜?」
「知るかよ――って、わっ!」
何度かそのやり取りを繰り返していると、早くも痺れを切らしたらしい那月に腕を引っ張り込まれて声を上げた。
頑張ったら疲れたなんてツイートしておいて、お前、人を膝に乗せて何をしようとしてるんだと。
「ほら〜翔ちゃんピヨちゃんとってもかわいいです!」
ぷつ、ぷつ、と躊躇なくパジャマのボタンを外してくる那月の手首を掴む。
「ちったぁ、我慢しろって。明日はみんなと会うんだから、腰痛なんて嫌だぞ」
「加減します。それに、明後日からはお仕事ですし、次いつえっち出来るか分かる?年末年始の合同ライブもあるんですから、2週間じゃ済みませんよ?それでも、翔ちゃんは平気なの?」
そんなわけないけど、わざわざ強く言うってことはつまり、加減する気はなさそうだってことで。
「そんな風に言ったってダメだ!一緒に寝ることは出来んだし」
背中にこたつの机が当たってるだけでなく、がっちりと両側からも抱きしめられて身動きが取りづらい。
頭を押し返そうとすれば、より強く抱き寄せてくる。
ボタンが外されてしまったパジャマの下にはタンクトップだけなのもあって、無理やり抵抗の言葉をひねり出す。
「さ、寒いだろ…!黒崎先輩みたいに風邪引くかもしんねえし!」
寒いどころか、顔が体が触れられているところ全部が熱くて、火が出そうなほどだ。
こたつや暖房のせいじゃないのは確かで、俺だけ我慢しようとしてるのがまた辛い。
社長の言った「節度を守って」は、この場合どこに掛かる?
今ここで那月としたら、明日に響く?
それとも、今しなかったら、後々我慢できなくなって――。
次の日に響くのは所詮、俺だけ。
尖ったそこに必要以上に熱い吐息を吹きかけながら、舌を這わされて、ぴくんと体が反応する。
「ん……逃げないんだ?」
「ホントに加減、してくれんなら、いい」
「翔ちゃんだいすき!」
机の上に乗り上げるようにしてキスされて。
いつもと変わらない苺の歯磨き粉味のそれに翻弄されていると、机についた手がカシャンと那月のキーボードを踏ん付けた。
せめて先に寝るって宣言した方がいい、と那月の胸を押し返してパソコンを見ると、タイムラインには意味不明な羅列がツイートされてしまっていて那月と顔を見合わせた。
『那月のやつ、寝てんじゃねーか?』
「あ〜翔ちゃんが打ったのに〜〜!」
「お前が押し倒すから、だろ!」
那月はそう言いながらも、話を合わせるようにツイートをしていて、トキヤも俺のことは何も呟いていなかったようでほっとしたのも束の間、那月のツイートに笑いが漏れる。
「大きなピヨちゃんって俺のことか…?」
被らされたフードを深く被るように引っ張ると、那月が満面の笑みで頷いた。

あいつらの辞書には加減という文字があるのかと疑う鈍痛に頭を抱えはしても、朝早くにベッドから居なくなってしまった温もりが恋しいだなんて自分でも笑ってしまう。
あのあと結局、暖房だけ消した状態でこたつでやらされてしまったわけだけど、裸の状態でピヨちゃんのポンチョだけは断固として脱がせてくれなくて、仕舞いには「翔ちゃんのクリスマスプレゼントはこのままピヨちゃんを着てくれることです!」なんて、バカなことを言い出した。
何がそんなにいいのか分からないが、どうせ自分では自分の姿は見れないし、ほかに誰が見てるわけでもないから折れることにしたのに、散々抱かれたあとに待ち受けていたのは那月の笑顔には到底、当てはまりもしなさそうなことだった。
「はぁ……ん、しょちゃ…僕からのクリスマスプレゼント…翔ちゃんと……さっちゃんに」
那月自らメガネを外そうとするのを止めようと手を伸ばせば、一足遅くて、手首を痛いほどに掴まれてしまう。
「折角の那月からのプレゼントだ。しっかり、味わわねえとなァ?しょーちゃんピヨちゃん?」
血の気が引くようでいて、恥ずかしさで血が昇るようでもあって、ちっとも格好がつかない上に、砂月までもがポンチョを脱がせてくれなくて、「那月が中で見てるんだ。脱がせるわけねえだろ」と抜かしやがった。
どっちも好きで、好きだから、そういう普通じゃありえないことも受け入れ――許してやれるんだって。
そんなわけで、この寒いのに、しばらくこたつはお預けになってしまった。
理由はまぁ、こたつ布団が以下略である。

クローゼットから服を取り出そうとしたところで、姿見に自分の姿が映ってげんなりした。
今、俺が着てるのはピヨちゃんのポンチョではなく、いつぞやの撮影で使った、あの頭の悪いサンタ服だ。黒の猫耳が生えているサンタ帽子はナイトキャップ代わりに、お腹を出したデザインでかなり寒く、夜のパーティで急に着替えなどさせられてもいいようにと、痕は一つもついていない。ショートパンツには尻尾が生え、ニーハイソックスまできっちり穿かされている。いや、寝ている間にずれたのか、くるくると膝下で止まっている。
それで、何でこんな格好で寝てたのかと言えば、砂月は事が終わったあとは必ず体を綺麗にしてくれて、パジャマを着せてくれるからだ。そう、これはクリスマス仕様のパジャマ代わり。
当然ながら那月のリクエスト、だそうだ。
まぁ、砂月自身も那月のリクエストだ、つって仏頂面でトナカイの格好をしてたけど、そんなことはお構いなしに「上に乗るのは俺だけどな」とお決まりのからかい文句。
逃げるようにベッドの端に丸まってやり過ごそうとしたら、後ろから抱きしめられたかと思うと足を絡められて、そのまますぐに寝息が聞こえてきた。
うなじに掛かる吐息がくすぐったくてもがいたら、腰に滑り降りてくる手に寝てなかったのかよと手の甲をつねって。
たぶん、明日…というか今日の夜は那月とこうなるに違いないから、体を反転させて擦り寄るように砂月に抱きついて眠りについたんだ。
「うわ〜〜〜こんの変態どもッ!」
思い出して赤くなってしまう顔に、首を横に振って、誰に届くこともない叫びと共にベッドの上に帽子を投げ捨てた。
そう思いはしても嫌いにはなれないのだから、もはや悟りを開いてしまったような気になる。
あいつらと付き合っていくということは、こういう面でもある程度許容してやらなければならないということ。
恋人としても、ライバルとしても、いつまでも隣に居られるように、俺が大人にならなければ。
一人で力強く頷いて、隠すようにはんてんを着込み、着替えを持って階段を下りていく。
腰の痛みはさほど酷いわけではないけれど、一応薬を飲みつつ、こたつの上に並ぶ二つのノートパソコンに目をやると、那月のパソコン画面にはツイッターが表示されていた。
「ったく、消すの忘れてるし」
画面をスクロールすれば、トキヤから料理長という役目を与えられてはしゃぐ那月のツイートに思わず頬が緩む。
トキヤや聖川の苦労も痛いほど分かるけど、那月と一緒に居られていいなってちょっとでも思う自分が居るのだから、これまた小っ恥ずかしい。
今日1日こんな調子だとクリスマスパーティで気が緩んでしまいそうで、気を引き締めるためにもさっさとシャワーを浴びて支度をすることにした。

乱雑に洗濯機に放り込まれただけのピヨちゃんのポンチョを見つけて、ネットに入れ直す。
「何で丈の短いポンチョがこんなに汚れんだろうな、不思議だなー」
棒読みで呟きながら、その他もろもろの服と一緒にスタートボタンを押す。
それもこれも、こたつだけじゃない熱で火照る体に那月がアイスを食べようなんて言い出したせいだ。
何があったかは自重するけど、今日の夜は迫られないことを祈るしかない。
だって、いくら節度を保ちたくても、抵抗できそうにない気がするほどに、あいつらが好き、だから。

Merry Christmas!



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普段使わない筋肉を使っても柔軟な体勢になれる=それってつまり、なっちゃんとさっちゃんに鍛えられたってことかなって^p^
なっちゃんがフラっと雑貨屋に消えてしまったときは、一応先に帰るって呟きをしておいて、やっぱ気になるから10分から20分ぐらいなっちゃんと一緒に居たんじゃないかな〜!
妙にリプライが素っ気無いのはカモフラにしか見えなくてだな。すっきりしたってのはシャワー浴びたからですね。はーかわいいなー
そんで、翔ちゃん→龍也さん、なっちゃん→林檎ちゃんって構図がまたたまりませんね!
メモ。Twitter for iPhone:翔ちゃん、音也、トキヤ、レン、らんらん、カミュ、龍也さん、林檎ちゃん。
Keitai Web:なっちゃん、まぁ様、セシル、嶺ちゃん。藍ちゃんは常にWeb。
執筆2012/12/24〜30