Under Lover

砂翔でパラレル。王道なただのアホエロっぽい?801。
男気全開の意味を履き違えた感満載の童貞を捨てたい翔ちゃん(23)がさっちゃん(18)に一目惚れしてヤられる話。さっちゃんが翔ちゃんにひたすら甘いのと、童貞でも処女ではない翔ちゃん。
男気全開なのかビッチなのか分かりません。終始ヤッてるだけ。※なっちゃんは出てきません。
大丈夫な方のみ、ご覧ください。
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「あんたさ、1人暮らし?ヤりてえんだけど」
通話ボタンを押した瞬間、普通ならイタズラとしか思えない台詞が飛んできた。
でも、それは俺が待ちに待った忘れもしない色気のある声だった。

緊張しているらしい俺の心臓に落ち着けと、通話口に手を当てて深呼吸する。
「番号忘れたのかと思った。1人暮らしだけど――」
「そのうるせえ音なんだよ」
さっきからずっと鳴り止まないインターホンの音に苦笑する。
電話の相手――サツキと出会ったのは年が明けてすぐ…今から1ヶ月ほど前のことだ。

酒を飲みながら音也に愚痴を聞いてもらった帰り、自販機で買ったばかりの冷たい水を音也に飲まされ、勢いあまって体に掛かってしまった。その冷たさに身を震わせて、俺はペットボトルを奪い取り音也に掛けてやろうとしたら、音也が青ざめて、俺はしめた、と思った。
だけど、後ろ向きで歩いていた俺はその意味に気づかないまま、中学生か高校生のケンカに巻き込まれてしまった。酒に酔っていたせいで空手の腕を披露する間もなく、助けてくれたのがサツキだった。
顔を見た瞬間、心臓が跳ねて「やっべ、俺あんたのこと好きかも」なんて口走った。
男にそう言われるのが慣れてるのか、サツキは眉間に皺を寄せたまま表情を変えなかった。
とにかくアドレスを聞き出そうと携帯電話を取り出して詰め寄った。
アドレスもそうだけど、何より声を聞きたかったんだ。
決して似ているわけじゃないのに、ポケットに手を突っ込んだまま、上体を反らして見下ろしてくる様が、俺が好きな空手家の日向龍也にダブっても見えた。
「…一晩、相手してくれんならいいぜ」
いわゆる「お仲間」だ、とアタリを引いたと思った。
しかも、どうしても聞いてみたかった声がドストライクで胸が高鳴った。

インターホンを鳴らし続ける男は、音也に愚痴を零す原因となった一夜限りの相手だ。
1人暮らしだから、性癖を家族に知られる心配がないのはいいけど、1人だからこそ、ぞっとすることもあって、家を教えてもいないのに調べたのか、こうしてやって来るようになった。
酒に酔った勢いとはいえ、俺にも抱かせてくれるって条件で抱かせてやったのに、しらばっくれやがった。
ここ数年、こいつ以外とも大体そんなパターンだった。
俺も承諾して事に及んだわけだから、それについてはもう怒っていなくても、体もがっしりしてて、顔付きも男らしい顔をしてるせいか小柄な方の俺を守りたいなんて思ってるらしく、関係を続けたいんだそうだ。
まぁ、俺が割と素直に足を開いたから、その面で心配してるとも言ってたような気はするけど、抱かれること自体は俺を好きだって言うやつばっかだから、優しくしてくれるし嫌いではないだけだった。
と言っても、好きでもないけど。
でも、あまりにそんなことが続くから、俺は早く童貞を捨てたかったんだ。

そんなこともあって、サツキは180cmオーバーの長身だけど、18歳…俺より5つも年下らしく、主導権を握りやすいかもしれないと、流すように頷いた。
音也には止められたけど、サツキは「今日じゃなくてもいい」と言って、携帯電話を奪われたかと思うと1分程で番号を暗記されてしまった。「非通知で掛けるから出ろよ」と。
そして、1ヶ月ほど経った今、やっと電話が掛かってきたというわけだった。

「いやぁ、ストーカーっつーか、なんつーか」
携帯電話を左に持ち替えて、冗談交じりに言ってみると、サツキは声を低めて言った。
「家、どこ?追っ払ってやるよ」
今まで一夜限りの男に家を教えたことはなかったけど、引越ししようかと考えているところだったから、それであの男が引き下がるなら儲けもんだと、マンションの住所と部屋の番号を教えた。
それに、サツキとは一夜だけで終わらせたくないから。
「30分は掛かるな」
案外近いところに居たのか、サツキはそう言うと「シャワーでも浴びて待ってろ」と続けた。
18歳のくせに、声や体格だけじゃなく妙に落ち着いているというのか、余裕が垣間見えてなんとなく面白くない。
「サツキくん、早く来て!わたし、綺麗にして待ってるから!」
「はぁ?鬱陶しいからやめろ」
「えー?サツキくん、こわーい!」
「あーハイハイ。もう切るぞ」
そのままサツキから通話が切れて、煩いインターホンの電源を切ろうかと思ったけど、サツキが来たときエントランスからの方も繋がらなかったらダメだと放っておくことにした。

電話が来るよりも前にすでに風呂に入ってたこともあって、早めにサツキが着いたときの場合も考えて、本当にナカを綺麗に洗うだけにして少し経った頃、インターホンが鳴り止んだ。
もしかして、諦めて帰った?
そんな思いで暗い廊下を抜けて、玄関扉の小さな穴から外を覗き込む。
穴の向こうには人影が2つあって、1人はあの男、もう1人はマンションに在沖している警備員だった。
いつまでも俺の部屋の前に居る男を不審に思った近所の人が連絡したのかもしれない。
俺から警備室へ連絡してどうこうというのは、男からストーカー被害を受けてるなんて思われたくないし、実際、この男とは1度だけでも関係を持ったことがあるから、俺から連絡した、なんて知れると不都合なこともあるからしたくなかった。
「この前も君だったよね?友達、なんて言ってたけど本当?」
「本当だって。聞いてみれば分かる」
インターホンがもう1度鳴ったかと思うと、何かが穴を塞いだ。
「会わせたくない」
聞こえてきたのがサツキの声で驚いた。
30分は掛かると言っていたのに、20分程度しか経っていなかったから。
どことなく息が切れている気がする。
俺の冗談を真に受けて走ってきた?
いや、冗談ではないけど。
「大体、本当に友達なんだったら、チビだってすんなり出てくんだろうよ」
チビって。
確かに見上げるぐらい身長差があったけど、番号だけじゃなく、名前も見ただろうし知ってるんじゃないのか。
「いきなり現れて、お前こそ翔の何?友達?」
敵意を露にする男の声音に、黙って見守るなんてことはせず玄関の扉を開いた。
外はもう真っ暗でマンションの6階からはそれなりの夜景が広がっていて、底冷えしそうな風が吹き付けてくる。
出会ったときと同じ黒のジャケットを着ているサツキの肩を掴んだ。
「こいつの言う通りだ。友達だって思ってんなら、居留守なんて使ったりしねえよ」
「翔!この前のことまだ怒ってんのか?」
男が近寄ってくると、男を一定上近づけさせないようにサツキが俺の前に腕を伸ばした。
「…もう来ないでくれ」
いい体格しててずるいな、って気になった程度でこの男が好きだなんて思ったことはなかったし、俺はもうサツキが好きだから。
「今度はこの男かよ」
途端に冷めた目でサツキを見る男を睨みつけて、1歩前に出る。
「こいつは友達だよ!」
「違うだろ?こいつは俺のだ」
サツキに肩を抱き寄せられて、心臓が跳ねた。
少し汗っぽい匂いがして、やっぱり走ってきてくれたんだと思ったら、余計に顔が熱かった。
って、ときめいてる場合じゃねえ!
警備員を見れば、予想通り驚いた顔をしていて慌てて弁解する。
「待て待て待――ぶへっ」
だけど、胸に顔を押し付けられて、言葉を遮られてしまう。
「黙ってろ。諦めないんだったら警察呼んでやるけどどうする」
「……出直すよ。翔、ちゃんと2人で話させてくれ」
色々と伝えておきたいことはあるのに、後頭部を押さえつけてくるから言えなくて。
「セキュリティどうなってんだよ。もうそいつ入れないようにしてくれ」
警備員がびくつきながら背筋を伸ばして頭を下げた。
マンション側が雇っている警備員といっても、ただ突っ立ってるだけの印象が強いから、対応してくれるのかは分からない。
「また――」
警備員に連れて行かれる直前、男が何かを言いかけたけど、サツキに耳を塞がれてしまって最後まで聞き取れなかった。

豆電球をつけただけのそう広くもない1LDKの部屋に戻って電気を付け直すと、温かいお茶を入れて、片方のコップには砂月の希望通り氷を入れて、ソファに腰掛ける。
リビングは全体的にモノトーン調にまとめていて、2人掛けの黒のソファに、大きくもないテレビが一台と白の天板に黒い足の低いテーブルの上にゲーム機が置いてあるほかは、トレーニング器具がいくつかある程度だ。
コートを脱ぎながら、日向龍也のポスターを見ているサツキに座れよ、と声を掛ける。
砂月は手にスーツケースを下げていたから「温泉でも行った帰り?」と、聞くと「そんなとこだ」と返ってきた。
「あーさっみ。外なんか出るんじゃなかった」
呟きながらお茶で温まったコップを包むように持ち直す。
少しだけ冷ますように息を吹きかけて一口飲むと、渋くもないお茶が冷えてしまった体にほっこりと染み渡る。
息を一つ零せば、隣に腰掛けたサツキが抱き寄せてくる。
これからすることに早まっていた鼓動が、お茶を飲んで落ち着いた気がしていたのに。
「……その気あったんなら、すぐ電話くれなかったのは何で?センター近かったから?」
サツキと出会った頃は正月を過ぎてすぐで、今はもう2月の半ばだった。
例え、温泉旅行に行ってたからだったとしても、流石に1ヶ月も掛からないだろうし気になってしまう。
返事がなくて見上げれば、前髪を掻き揚げてきて額にキスしてくる。
外灯に僅かに照らされた顔しか見てなかったから、まともに顔を見て言葉が出なかった。
端正な顔つきをしていて、切れ長の鋭い翡翠色の瞳に不釣合いな緩くカールがかった金の髪が可愛らしい。
俺って面食いだったのか、と思うと同時に、一目惚れなんて大概がそういうもんかもしれないと思った。
砂月が氷の入ったコップを手にとって、喉仏を上下に動かすから、つられてごくりと、喉が鳴った。
大体にして、18でこの体格と色気だ。手馴れていることもそうだけど、妙に落ち着いているのも唆られる。
俺の理想は日向龍也だけど、23にもなって学生時代から変わらない見た目のせいで、かわいいだの幼いだのと言われるこの顔と…身長にコンプレックスを抱いているから、その全てが羨ましかった。
コップをテーブルに戻すサツキをじっと見ていたら、ふいに俺のコップを取られたかと思うと唇を舐められて肩がびくついた。
「何考えてんだ?顔赤いぞ」
「き、気のせいだ!それより、さっきの答えろよ」
「んなことどうでもいいだろ。ここでヤッていいのか?」
言いながら、テーブルの上にコップを置いて、ソファに押し倒してくるからサツキの胸を押し返す。
「待て。確かに俺はこの1ヶ月ほど酒もやめてたし、ナカも綺麗にして待ってたけど、ちょっとぐらいお前のこと教えてくれたっていいじゃん」
酒をやめてた理由はサツキに会ったとき、キスされそうになって「酒なんか似合わねえよ。次に会うまで止めろ。抱く気にならねえ」と言われたからだった。
俺が抱かれる側かよ!って怒ったら、「まぁ、誘ったのはお前だからな。嫌ならなかったことにするだけだ」と、手離すのは惜しくないとアッサリしているのが更に気に入ってしまった。
俺を気に入ってくれるやつは、何かと独占欲が強いやつが多くて、いい加減鬱陶しいと思っていたから。
「…大学はもう決まってる。すぐ電話できなかったのは都合がつかなかっただけだ」
「……名前の漢字教えてくれ」
「砂の月。もういいだろ?」
窺うように見てくる――砂月の瞳が射抜くようなそれではなく、どことなく優しく感じる。
体を起こして、砂月の腕を掴んで立ち上がる。
「ん、いい。ベッド行こうぜ。あ、俺の名前は翔。飛翔の翔」
「前に携帯見たから知ってる」
「だったら、ちゃんと名前で呼べよ。チビは絶対にやめろ」
「……分かった」
案外、素直じゃねえか。
俺のことをちゃんと年上だと認識してくれてるのかもしれない。
満足げに頷いて寝室に入ると、シングルベッドの上に放り投げたままになっていた雑誌や服なんかを床に退ける。
「汚くて悪いな」
苦笑気味に言えば、砂月は「別に」とだけ言った。
一通り物を退けたところで、入り口にある照明のスイッチに手を伸ばす。
「電気つける?消したままの方がいい?つっても、消したら豆電もないし真っ暗だけど」
橙色のスタンドライトなんかあったら雰囲気出るんだろうけど、家でしたことないし特に必要でもないから部屋にはなかった。
「……暗い方が…いや、つけてくれ」
パチンと照明をつけて扉を閉めると、ベッドに腰掛けている砂月の膝に向かい合わせにして乗った。
服を脱がせようとすると、腕を掴まれて視界が反転する。
ベッドに組み敷かれて、見つめてくる頬に触れれば、その手を掴まれて手の平にキスをしてくる。
「がっついてくる方だと思ってたんだけど違うのか?」
「……そっちの方が好みなんだったら、合わせるけど?」
「んー俺に電話してきたときの気分のままやってくれたらいい」
「………優しくできねえぞ」
砂月の瞳が鋭くなって、首筋に鼻先を摺り寄せてきたかと思うと、強く吸い付かれて痛みで顔が歪む。
「いってえよ、ばか!痕はつけんな!」
今日はタイミングよく金曜で明日は休みでも、明後日は出勤日だった。
ジムのインストラクターをしてるから首ぐらいならタオルを巻きつけとけばいいけど、腹筋なんかを見せろと言われることもあって見られるところにつけられると困る。
舌打ちする砂月が噛み付くようにキスしてくる。
「んっ……ふ…」
歯列をなぞって上顎を舐めてくる舌に頭が痺れて、もうそれだけで早くも息がし辛くなってきた。
腰に手が触れて、そこが熱を持ったように熱くて、心臓が強く跳ねた。
酒を飲んだ勢いでしか体を重ねたことがなかったから、常に体は火照っていたわけで、シラフだとこんな感じなのかと新鮮だった。
鋭い瞳と激しいキス、腰を撫でるように動く手だけで、気分が飲まれていくようだ。
ズボンの中に手が滑ってきて、遠慮もなく俺のものに触れてくるから体がびくついた。
「…んぁ」
「…あ?テントどころか、もう濡れてんのか」
「うっせ!」
顔が熱くて砂月の服を掴んで捲り上げれば、腕を掴まれて睨んでくる。
「上は脱がない」
何で?なんて聞けなかった。
割れた腹筋に目を惹かれはしても、それ以上に砂月の肌にいくつか散ったキスマークが見えたから。
なんとなく気まずくて砂月を見れないでいると、砂月が首筋に顔を埋めて舐めてくる。
「変に気にする必要はないが、自分がつけた痕じゃないものを見せられたら萎えるだろ?」
独占欲を持たれるのが嫌だと思いながら、それに似た感情を抱いている自分に気づいた。
「…ん…かもな…」
相手は男なのか、女なのか、聞いたところで余計に萎えそうだから、自分から上の服を脱ぎ捨てる。
「痕、薄っすらならつけていいっつーか、つけろ」
途端に胸の先端を舐め上げられて、鼻から抜けるような声が漏れてしまう。
強気で言ったのに、そんな声が出ると思わなくて驚きと共に熱くなる顔を腕で覆った。
「隠すな」
すぐさま腕を退けてくるから、顔を背けて視線に堪えていると砂月がくつくつと笑った。
「生娘みたいな反応するんだな?」
言いながら、胸の先端を弾かれて体が跳ねた。
「ひゃっ!…だって……酒も飲んでないし…その、俺から好きになったやつとすんのも初めてだから…」
好きだと言っても特に表情を変えるわけでもなく、下着の上からつーっと指で先走りで濡れる先端を触ってくる。
「だからこんなに濡らして…いやらしいやつ」
触られるだけじゃなくて、声だけでもヤバイ。
素直に反応して集中するように熱くなってくる下腹部が憎い。
目を瞑って、小さく呟く。
「……出して…」
「嫌だって言ったら?」
意味が分からないと砂月を見上げれば、体を起こされてベッド上部に枕を立てて凭れさせられる。
「自分で出せって言ってんだよ」
「なっ!?」
今までの相手は出してって言ったらすぐ出させてくれてたから、顔から火が出そうだった。
「1人でしてるの見たい」
そういうAVを見たことがないわけじゃないし、気持ちが分からなくもないけど、初めて寝る相手にそれを要求するか?普通。
「……高くつくぞ」
「何?金?」
「俺にも抱かせろ!」
びしっと砂月を指差して言えば、砂月が見下ろすように舌なめずりした。
何だ、その色気…。
コントロールでも出来るのかと思うほど、強い色香を放つ砂月に体が固まる。
でも――。
「俺が満足したあと、お前の腰が立つんならヤらせてやるよ」
「え、マジ!?」
期待してなかっただけに飛びつくと、砂月は短く肯定した。
童貞を捨てられる相手が好きなやつなんて、一般的には当たり前でも俺にとってはこれ以上ないチャンスかもしれない。
「絶対抱いてやるからな!」
「ハイハイ。早くしねえとなかったことにして犯すぞ」
俺は別にどっちでもいい、と言わんばかりの挑発するような顔で言うから叫んだ。
「くそ…!好きだ、ばか!」
喉の奥で笑う砂月を無視して、羞恥心を押さえ込みながら、膝を立てて下着から自分のものを取り出す。
どうせなら、さっさと出して早く抱いてもらおうと、先走りで濡れる先端に親指で強く刺激する。
それだけで射精感が込み上げてきて身震いすれば、砂月が傍に寄ってきて顎を掴まれた。
「俺を見ながらやれ」
「…恥、ずかしいだろ」
目を伏せると、耳を甘噛みしてきて名前を呼んでくるから。
「…っ!!」
ぞくぞくして思わず、熱を放ってしまった。
どくどくと飛び出す温かい液体に、穴があったら入りたくなる。
「………マ、ジかよ…」
耳まで真っ赤にして放心気味に息を繰り返していると、砂月が耳にちゅっとキスしてくる。
「耳弱いんだな。んっ…」
笑われることもなく耳の中に舌を入れられて、砂月の胸を押し返すけど、ぴちゃぴちゃと水音が響いてきて力が抜けてしまう。
「ぁ、ん……っ…」
顔や雰囲気もそうだけど、声に惚れたのもあるわけで、浅ましくも再び芯を帯びてくる自分のものに顔をしかめて、流されるままにゆっくりとズボンごと下着を脱いで足を開いた。
「ふぁ……ナカ、弄って…」
「ねだるのが上手いな。一体、どれだけのやつに足開いてきたんだ?」
「…どうでもいいだろ。砂月、早く」
砂月の首に腕を回して首筋に吸い付けば、2本の指が挿ってくる。
「ん……ぁ…ふ…」
ぐちぐちと音を立てるそこが熱くて、砂月に縋りつきながらずるずると下がっていく。
ただ擦られるだけで気持ちいいなんて、今までに思ったことがあったか分からない。
違和感さえもなく軽々と長い指を飲み込んで、ある一点に触れたとき反射的に体が跳ね上がった。
「ぁんっ…ぁ、ぁあ……やば、そこ、なに!?」
砂月の肩から手が滑り落ちて、枕に頭を押し付けるように仰け反ったまま、そこを触られるたびに体がびくびくと震えてしまう。
覆いかぶさったまま、砂月が俺の顔ばかりをじっと見てくるから恥ずかしくてたまらなかった。
「前立腺だろ。何で知らねえんだ」
「ぁ…ぁっ……だっ…て、いつも、あんまり気持ちよくなかっ――ひゃんっ!」
「ふうん…まぁ、善くなるまで時間掛かるからな。ここは」
開発しようとしてくるやつもいたけど、それとは関係なく感じやすくなってる気がするのは好きなやつが相手だから?
酒を飲んでないせい?それとも、砂月が巧いだけ?
「あっ、ぁん……ふっ、や………ぁあっ…そこ、きもちい………やん、ぁっ、あ…!」
反応するたびに砂月が面白そうに笑って、達しそうになる手前で止められてしまう。
跳ね上がる足で蹴ってしまっても、砂月は気にも留めなかった。
勝手に滲んでくる涙が邪魔で、砂月の服で涙を拭って、そのまま引っ張った。
「ぅあ……ぁ、も、もうイく………イ…く…からぁ…」
前立腺を撫でられるだけじゃなくて、こりこりと引っかくようにされると先走りが零れ落ちてくるのが分かる。
強い射精感が波のようにやってくるのに達することが出来なくて、子どもがいやいやするように首を振った。
「ぁっ、ん、やぁ…!…も、イかせて…!」
「……具体的に言わねえと分からねえよ」
砂月が余裕をかまして目を細めるから、砂月の股間を緩く蹴りつける。
「ってえな…」
「嘘付け!お前の勃ってるやつ挿れろっつってんだよ!」
眉間に皺を寄せる砂月が指を引き抜いたかと思うと、足を引っ張られて枕から頭が落ちてしまう。
「…折角色気あったのに、もっと色っぽくねだれよ」
「色っぽく…?お願い、砂月くん!わたしの気持ちいいとこ突いて!とか…?」
砂月が鼻で笑って、カチャカチャとベルトを外していく。
「ちっとも唆られねえよ」
服を下ろして取り出された、いきり立っている砂月のものから透明な先走りが垂れていて、汗が零れ落ちた。
今まで相手にしてきた誰よりも大きいそれが、俺の中に納まる気がしなくて、顔が引きつるのが分かる。
「は、ぁ……それ、いたそ…」
言えば、砂月が辺りをきょろきょろと見回しながら言った。
「……ローションかなんかねえの?」
「家でしたことないし…持ってない」
1人でするときは後ろを弄るわけじゃないから必要性も感じなかった。
「なら、これで我慢するんだな」
先に俺が吐き出した精液や、俺の先走りまでもを秘所に塗りこむようにしてくるから、顔がぼっと熱くなる。
「やっ、恥ずかしいっつーの…!」
足を閉じて隠そうとしても、膝を開かせてきて、砂月が口角を上げて言った。
「セックスなんてそんなもんだろ」
くちゅくちゅと鳴る水音と羞恥心をかき消すように声を上げる。
「何だよ、その余裕!」
「そう見えんのか?突きたくてたまんねえ」
言いながら口元を歪めた砂月の髪が汗で額に張り付いている。
挿れたいならそうすればいいのに、とも思うけど、解すように動く指が俺を気遣っているんだと分かって、きゅうと締め付けてくるように胸が高鳴った。
「……そ、そういう意味じゃなくって…恥ずかしそうに見えないって――」
「ヤる側が恥ずかしがってどうってもんでもねえだろ」
……俺がそんな気分で砂月を抱ける気がしないのは何でなんだ。
経験の差?って言っても、俺より5つも年下であるはずの砂月がどれだけ経験あるのかも知らないし、俺が自分よりもでかいやつを抱いてるイメージが沸かないだけか?
「もういいか…」
呟くように言った砂月は指を引き抜いて、太ももを押し上げてくる。
「ただ、興奮と…緊張はしてる」
その一言で煩い心臓の音が更に早まった気がした。
ずち、と音を立てながら、割り込んでくるそれが息が止まるかと思うほどの質量で悲鳴を上げる。
「ぁあああ…!」
熱い。痛い。苦しい。
そんなことしか感じなくて抜いて欲しかった。
でも、それ以上にもっと奥まで来て欲しいなんて思ったのは初めてで。
「っきつ……力、抜けよ」
閉じようとする足を開かされて押さえつけてくる。
「そ、んなん、わかんねっ…ぁあ、いっ…!」
空間が少しだけ広くなったような気がすると同時に、中に挿ってくるそれに目を見開いた。
すると、優しくできない、と言ったのに砂月が顔を歪めて引き抜こうとするから、砂月の服を引っ張って首を横に振る。
「いい、奥…」
「っ、だったら、ゆっくり息しろ…裂けるぞ」
「ひっ…やだ…待って!」
病院で男とセックスしてて切れました、なんて言えるわけがない。
絶対にローションを買おうと心に決めて、深く深呼吸する。
砂月から滲む汗がぽたぽたと落ちてきて、もう一度深く息を吐いた。
瞬間、ゆっくりと押し込まれて、気持ちいいところを掠めて高い声が飛び出した。
「ぁんっ……ふ、ぁ……ぁ…砂月…んっ…ふ…」
名前を呼べば、唇にキスがやってくる。
荒い吐息や熱い舌を求めるように口腔を貪りあう。
キスでさえ主導権は砂月が握っているらしく、探ろうと思っても舌を吸われて押し返されるばかりだった。
早い鼓動が俺の中の砂月と交互に脈打っている感覚と、激しいキスのせいで息も絶え絶えで、溶けてしまいそうなほど頭がぼうっとしてくる。
あぁ、このままじゃ、砂月に抱かれて終わってしまう。
砂月の胸を押し返して、僅かに離れた隙に言葉にする。
「んぁ…動いて」
開かされた足を掴んでぎりぎりまで引き抜かれて息をつけば、その緩みを狙って押し挿ってくる。
痛みと共に、僅かにいいところに当たるとゆっくり時間をかけてそこを擦り上げられて叫んだ。
「ひぁ、あああっ…!」
たったその動作だけで、目一杯体を反らして、勢いもなく押し出すようにだらだらと熱が溢れ出した。
「ぁ、ぁ…あ、……砂月、さつき…」
今までこんな風に射精したことがないからか、涙が零れ落ちてきた。
「…は、ぁ……泣、くほど…善いか?」
強すぎる快楽がじんと熱を持って、硬直に近い痙攣を起こして、やっとで熱を出し切ると体がベッドに落ちた。
浅く呼吸を繰り返しながら、涙に濡れて霞んだ視界で砂月を見上げる。
「……ふ、ぁ……ん……すげ、きもち…」
髪にキスされて、押し込まれたそれが引き抜かれていく。
砂月の律動は激しいものではなく、初めと同じようにいいところ――前立腺だけを狙ってゆっくりと突き上げてくるものだった。
「いっ…ぁああ………ぁ…ぁあぁん、…………は、ぁ…あぁぁぁっ」
体の中から押し上げてくる動きにつられて、背中が浮き上がる。
漏れ出る声が断続的なそれではなく、か細くて長くなってしまうのが余計に恥ずかしかった。
痛みにも慣れて、完全に快楽が上回ってきた頃、いきなり奥まで挿ってきたかと思うと、砂月がくぐもった声を出して一気に引き抜かれた。
直後、繋がっていたところや俺の体に砂月の熱が飛び散った。
「ひぅ……ぁあ、ぁっ…あ、…ん…」
「はぁ……ん、どこも弄ってねえのに声出んのか」
熱が掛かるたびにどうしようもなく漏れてしまうだけだった。
それに、人が達するところを見たのは初めてじゃないのに、掛けられても不快感がないどころか――。
「……熱くて、気持ちいい…」
自分のと混じる砂月の精液を撫でながら言えば、出し切ったそれを俺のものと重ね合わせてくる。
「はっ、ドがつくほどのMだな」
「違ぇし……つーか、お前マジでかすぎ…もぐぞ!」
俺のは勃ってるのに、何の嫌味かと思うほどの差を見せ付けられて手を伸ばせば、その手の平に再びにキスしてきて、ついでとばかりに精液を舐めてくるから、「恥ずかしいことすんな!」と慌てて引っ込める。
「でかけりゃいいってもんでもねえよ。痛かったんだろ」
目じりにちゅっとキスしてくるから、自分のものから先走りがとろっと溢れてびくびくと震えた。
それが砂月に伝わっていると思ったら、言葉にするなんて容易くて。
「……でも、くせになりそ…」
「やっぱドMなんじゃねえか…んっ…」
唇にキスがやってくると共に、裏を擦るように砂月が動いた。
「っ…!!」
手で緩く包まれるだけで達してしまいそうだったのもあって、今度は俺が熱を吐き出した。
唇が離れたかと思うと砂月が「可愛いな」なんて呟くから、普段なら絶対に嬉しくない言葉が変に意識させて口をパクパクさせた。
「ぁぅ……ぁっ、ぁ、かわい、て言うなっ!」
やっとでそう言えば、砂月のものが脈打った。
「ひぁ、ばか…でかくなんな!!」
「正直なだけだ。動くぞ」
砂月が僅かに笑って、乗りかかりながら重ねたまま上下に擦ってくる。
「…あっ、ぁ………ぁぁあん………ふぁ、ん……ぁっ!」
達したばかりでただでさえ敏感なのに、滑りがいいのも手伝って、より強い快楽がやってくる。
仰け反ったまま、開く口が渇いて掠れ始めて息が苦しい。勝手に零れてくる涙も、汗も、高い声もいつもなら邪魔でしかなかったのに、その全部が心地よく感じた。
今まで体を重ねてきた経験はそう多くはなくても、好きな相手に抱かれている、たったそれだけのことがこれほどの違いを身体にもたらして、幸福感で満たされるなんて思いもよらなかった。
砂月は俺のことをどう思ってるのか分からないけど、こうして抱いてくれてるだけでどうでもいいとさえ思える。
至極単純に言えば、もっと、深く砂月を感じたかった。
「……も、それ、やぁ!ひぅ……もっかい、ナカ…、砂月…」
砂月が眉間に皺を寄せたまま体を離して、荒い呼吸を整えるように息を吐いた。
そのまま、ゆっくりと焦らすように太ももに触れて、押し上げてくる。砂月の手についた精液がそこを伝ってくるのが見えたかと思うと、秘所を指で撫でてきて声が飛び出した。
「んぁっ…!」
わざと音を立てて撫でる指が僅かに挿ってきたかと思うと、すぐに抜かれてしまう。
それを繰り返されるうちに、自分でもひくついてると分かってきて、そこが熱くて疼いてたまらない。
「っ焦らすなって…」
言えば、中に指が挿りきったところで手の平で揉むように袋に触れてくる。
「ぁあっ、それイく…ってば…」
「だったら出しちまえ」
覆いかぶさってきた砂月が鎖骨の辺りに吸いついてくる。
痕が散っていくのが見えて身震いすれば、堪えきれなくて熱が飛び出した。
「や…ぁぁあんっ…!」
ついさっき達したばかりなのに、今日はいつもよりずっと早くて呆然と息を吐いていると、砂月と目が合って、首に腕を回して頭を抱き込むようにキスをする。
「んっ…」
舌を絡めるそれではなく、唇に吸い付くようにすれば、ちゅくちゅくとリップ音が響いてきて気持ちよかった。
砂月が離れようとするから、僅かに体を起こして縋りつけば、ベッドに押し付けるように深く口付けられる。
秘所に挿ったままの指が引き抜かれて、内ももを撫でた。
薄っすらと目を開けて見つめれば、砂月が細めた瞳で熱く見つめ返してくるから、勘違いかもしれなくても、俺のこと少しでも好きなのかなって思ったら嬉しくなった。
唇が離れると、砂月が苦しそうに言った。
「加減…、できねえぞ」
熱すぎる吐息に浮かされるように微笑んだ。
「…いい」
砂月を求めてひくつくそこに砂月のものが挿ってきて、力なく広げた足が体が強張る。
「ぁああ、あつい………いっ……あぁっ、もっと……、ぁぁあっ…!」
ずぷ、と奥まで挿ってくる痛みで目を見開いて、背筋が反れた。
力が入るたびに砂月のものを形取って、より強く感じたいと思えば更にそれを締め付けてしまう。
ぎちぎちと立てている音に砂月の顔が歪んで、頬に手を添えてくる。
「っ締め、過ぎだっつの…」
次いで頬にキスされて、零れる涙を舐めてくる。
「ぁう……ごめ…」
震える声で言って砂月の頬にキスを返せば、抱きしめてくる砂月に、ゆっくりと呼吸が落ち着いていった。
砂月の肩に縋りついて、首筋に鼻先を摺り寄せて小さく吸い付く。
「…ちゅ、…すき、さつき、すきだ…」
「あぁ」
子どもをあやすように頭をぽんぽんと叩かれたかと思うと、ベッドに下ろしてくる。
砂月の服を伸びるほどに引っ張れば、重ねるように取られた手を恋人のように繋いでくる。こんな風に繋がれるだけでときめくなんて、俺はなんて簡単なんだと目を伏せた。
途端に呼ばれる名前に肩がびくついてしまう。
「こっち見ろよ」
気恥ずかしくて、でも、自分の目に砂月を焼き付けたくて、そっと見上げた。
目線が交わった直後、砂月が体を引き抜いて突き上げてくる。
「ん、ぁ、ぁあんっ…!」
初めはゆっくりと、次第に勢いを増してくるそれに愛しさを覚えた。
「……ふ、ぁ、あっ……ひぁ、あぁぁっ…!」
荒い吐息と卑猥な水音が鼓動と同じぐらい早くなっていく。
腹部の方へと向かって擦られて突かれるのが気持ちよくて狂ってしまいそうだ。
「ぁっ、あ…もっ、と…奥……そ…ぁあ……あっ、ぁ、ぁぁあ…っ!」
びくんと反り返るのを感じたかと思うと、砂月が動くのを止めてしまう。
「っ……は、ん……本当に早いな」
「ぇ、あ、…?」
何を言われたのか一瞬分からなくて遅れて理解した。
今までに感じたことのない強すぎる快楽が頭と体を支配していて、堪える間もなく熱を放っていたらしかった。
「…砂月、…んぁ……ぁあっ、ぁぅ…!」
再び動き始める砂月に合わせて声を漏らしているうちに、体がびくびくと痙攣して仰け反ったまま動けなかった。
苦しそうな顔で口角を上げる砂月が握っていた手を離したかと思うと、太ももを掴んでくるから首を横に振る。
「やらっ……さつ、っ中…だして…」
「知らねえぞ……っく…」
ずぶりと砂月の全部を飲み込んで、一拍遅れて吐き出された熱が体の中を逆流してきて、きゅるきゅると鳴るお腹に笑みさえこぼれた。
砂月が息を吐きながら、上体を起こして自分の髪を掻き揚げて、服をパタパタさせる。
「あっつ…そんな蕩けた顔してて、俺を抱く気あんのか?」
当たり前だ、と返す間もなく、ごりごりと突いてきて体が跳ねた。
「ひゃぁんっ…も、だめっ……おかしく、な…!」
抱きたいという気持ちはあっても動けると思えなくて叫べば、中から砂月が引き抜かれた。
それにつられて、秘所から砂月の熱が垂れてくるのが分かって小さく声が漏れてしまう。
「ぁ、ぁ……出ちゃう…」
「中に出されて喜ぶなんて変態だな」
「っ……う、るせ…」
自然と口から飛び出していただけだけど、本当にそうなのだから居たたまれなかった。
「もう寝る…!」
体を横に倒すと片尻を掴まれて、何かと思えば砂月が腰に吸い付いてくる。
そのままちゅっちゅと上にやってくると、腕を持ち上げられて脇の下にまでキスされて、熱が収まりそうになかった。
「ばっか、そんなとこ舐めんな!」
「煽ってんだよ。察しろ」
言いながら体を正面に戻されて、砂月が胸の先端を口に含めてくる。
抱き足りないって思われるのは嬉しいけど、それなら尚更、また今度すればいいのにそんなに急がなくてもと思う。
「ん……俺、もうギブ」
砂月の頭を押し返しながら言えば、砂月があっさりと離れていく。
「鍛えてんじゃねえのか?体力ねえな」
「いやいやいやいや、それとこれとは関係ないから」
「……まぁそうだな。こんなに早漏だと思わなかったし」
「俺だってこんな早いの初めてだっつの!大体、気持ちよす――ぁあああ」
口が滑った、と慌てて顔を両手で隠せば、砂月が俺の茂みに触れながら呟いた。
「……剃りてえ」
何でいきなりそんなこと言い出したんだと、呆気に取られる。
「人のこと言えねえだろ。この変態…」
だから、初めてセックスしたっての忘れんなよ…。
普通なら引かれるぞ、って俺も中に出せなんて言ったのもしかして引かれたのか…?
……お互い様だな、うん。
一人で納得していると、砂月が言った。
「……お前が可愛いのが悪い」
「可愛いって言うな!ってお前…は?どこのことだよ!!」
人のものに触れてくるから思わず叫べば、砂月が鼻で笑いやがった。
「何勘違いしてんだ?顔に決まってんだろ」
墓穴…なのか?
いや、どう考えても誘導しただろ!?
「ああぁあ!!どっちにしろ嫌だっつの!もう退け!」
真っ赤になって砂月の肩を蹴れば、俺のものを強く握ってきてその足が跳ね上がった。
「ひゃんっ!!ふざけ、お前……ぁぁあっ…!」
容赦なくぐりぐりと刺激してくる指に腰が浮き上がる。
「っぁ、あ……も、無理だって…!」
「嘘吐くなよ。勃ってきてるだろうが」
「お前…マジ、…っあとで覚えとけ…!!」

カーテンからは薄っすらと明るくなり始めた光が漏れていて、どうやら夜通し体を重ね続けていたようだった。
イく、という感覚はあっても達することが出来なくて、わけのわからないまま仰け反っていた時間が長く、声が枯れてしまっても、快楽には逆らえなくて引っ切り無しに声を漏らしていた。
時折休んでも、狭いベッドでくっついているうちに、どちらからともなくキスをして流されるままに体を求めた。
いつもなら寒さに凍えて布団に篭っている頃なのに、今日は熱気で蕩けてしまいそうだ。
「……悪い、無理させた」
汗でへばりつく髪を掻き揚げられて、体を引き抜かれる。
そのまま横に寝転ぶかと思った砂月は、閉じた足を開かせてきて内ももに吸い付いてくる。
唇が離れるとそこに薄っすらとキスマークがついていた。
俺が痕をつけろ、と言ったからか、鎖骨辺りや腰、腕なんかにも散っている。
太ももなんかはすぐ傍に俺の性器があるわけだからかなり恥ずかしいけど、砂月の顔が間近なのと普通そんなところにキスされると思わない場所なのもあって、脇の下が一番恥ずかしかった。
ぐったりしたまま、重い瞼で砂月を見やれば、砂月も眠気はあるのか少しだけぼうっとしている。
結局、砂月を抱くことはしなかった。
というよりは、抱かれているうちに抱きたいという気持ちが減っていった気がする。
やっぱり1度ぐらいは抱いてみたいとは思うけど、拘る必要もないのかもしれなかった。
23にもなって童貞だから焦ってただけってのもあるし…。
単純に砂月に抱かれるのが気持ちよかったからかもしれないけど。
布団を被せながら隣に寝転んでくるから、暑いって布団を蹴ろうとしたら、すぐ寒くなる、とだけ言ったかと思うと寝息が聞こえてくる。
ベッドから落ちないようにと砂月に寄って、俺も目を閉じる。
運動後の疲労感のようなものと一緒に、何とも言えないふわふわした気分のまま眠りに落ちた。

「わっ!いっ……てぇ!」
冷え込む寒さに起きようか起きまいか、そんな朦朧とした意識の中、寝返りを打った瞬間、背中に強い衝撃がやってきて飛び起きた。
でこぼこした安定の悪さに顔をしかめると、ベッドの下に落としたままの雑誌や漫画なんかの上に落ちたらしかった。
「あ゛――っ!!!」
ぐしゃ、と雑誌の薄い紙に皺が寄っていて、表紙の日向龍也の顔が見る影もなかった。
「うわ、うわ、ええええ、マジ最ッ悪!!」
俺のバカ!アホ!まぬけ!!
うう……。
雑誌を掴んでわなわなと震えていると、その震えが悲しみや自分への怒りから来るものだけじゃないことに少しの間を置いて気づいた。
「つーか、寒っ!」
心だけじゃなく、何も身に着けていない肌に突き刺さるような冷たい空気に肩を抱いて、慌ててベッドに戻ろうと立ち上がろうとすると、落ちた衝撃で打ち付けた腰に痛みが走って、ベッドに腕と顔だけ乗る形で崩れ落ちた。
「っ…!」
今度は漫画を踏みつけてしまったらしく膝まで痛い。
「……あぁ…もう、寒いし痛い…」
そう呟いたところでベッドで寝ていると思っていた砂月が居ないことに気づく。
そりゃこれだけ騒いでて何の反応もない方がおかしいけど。
ズキッ、と痛む腰と頭、胸に顔を歪めて、そっと立ち上がる。
カーテンの外は明るいというよりは、日が落ち始めているようだった。
……まだ、まだ、約束を破られたわけじゃない。
大丈夫だ、と言い聞かせて、頭を抑えながらリビングへの扉を開く。
寒さで震える肩に手を添えて、痛みが走る箇所を摩りながらリビングに入れば、昨日俺が出した冷めたお茶が入ったコップが2つあって、ソファには砂月のジャケットが置かれたままだった。
ほっと息を吐いたはいいけど、砂月の姿が見当たらない。
せめて、何か着ようと寝室に戻れば、ムッと漂う雄臭に苦笑した。
大体1、2度達したら相手を蹴りつけてでも止めさせてた俺が朝まで抱かれ続けたなんて相当だった。
やっぱり、セックスには気持ちって大事なんだな、と改めて思った。
ゆったりとした灰色のスウェットと、パーカーを着込んで、ふらふらとした足取りでもう1度リビングに入る。
リモコンで暖房をつけて、カウンターキッチンを横切れば、薄暗い廊下に洗面所の光が漏れていた。
ノックもなく扉を開けば、立ち込める温かい湯気が頬を撫でる。
砂月の姿を確認して息をつくと、下だけ服を着た砂月の背中にまでキスマークが散っていて、思わず抱きついた。
「……シャワー浴びたのに匂い移るだろうが――って聞いてねえな」
砂月の背中に吸い付いて、誰かがつけたキスマークを俺ので消すように痕をつける。
「んぅ…」
そこを舐めて、他のとこも同じように痕をつけながら、前に回した手を下に滑らせれば、腕を掴まれてしまう。
「金、取るぞ」
「…あ?金っていくら欲しいんだよ。こづかいねえのか」
「90分2万から」
冗談かと思って言ったのに、砂月が声を低めるから肩がびくついた。

え、何…?
今、90分って言ったよな…?
このキスマークとか、妙に慣れてるのって、そういうこと?
早くなってくる心臓の音が煩い。
「……は?はぁ?冗談だろ?だって、そんなこと一言も」
砂月をこっちに向けさせても、表情を変えず、淡々と言った。
「初回は金取ってないだけだ」
掴まれたままの腕が痛くて、目をやれば砂月につけられたキスマークに胸が痛んだ。
砂月もちょっとは俺のこと好きなんだと思ってたのに。
「まぁ、昨夜は無理させたし、1度だけ1万に負けてやるけど?」
この一言で、また胸をえぐられた気がした。
ストーカーを追い払ってくれたことや、砂月が言葉で強く言うよりも優しく抱いてくれてたのは、俺を気遣ってるふりをしていただけだったんだ。
「手、痛いっつーの…」
「あぁ、悪い」
思い出したように言った砂月は、そのまま手の平にキスしてくる。
「それ、好きだな」
指の隙間から覗く、伏せられた長い睫がゆっくりと開くと、唇が離れる。
「……別に。で、どうすんだ?俺を抱きたいんならプラス1万な」
ぱっと手を離されて引っ込めると、キスされた手の平を撫でるように拳を緩く握って、ため息を吐いた。
こういうのは基本的に、満18歳からだろうし、在学中なら尚更認められるわけがない。
それとも、まだ誕生日がきてないだけで本当は満19歳?
そんなことを考えながら、傍にあるヒーターをつければ、足元に冷たい空気が流れてきて、段々とそれが温まっていく。
「お前、ホントは歳いくつなんだよ」
「二十歳」
砂月はわざわざ偽る必要があったのか、と思うほどに即答した。
例えそれが本当だったとしても、どっちにしろ俺より年下なのかよ、と舌打ちすれば、砂月が顔を掴んできた。
「ぶっ…なにすんだよ…!」
「イラッと来た」
金ヅル、という名の客候補相手にわきまえようとはしているのか、砂月はあっさりと手を引いた。
言葉はなくてもすぐに手が出たことや、俺を助けてくれたときの喧嘩っぷりを見ても、こっちの方が素っぽくてもっと見たいと思った、なんて。
「はぁ……金さえ払えば、また会ってくれんだな?」
大体、酒をやめろって言ったのだって、俺に似合わないってことより、金を貯めさせるのが理由だったりして…。
有り得そうなのが何とも言えないけど、あのしつこいストーカーの男がまた話したいみたいなこと言ってたし、引越しも視野に入れつつ砂月に彼氏の振りを続けさせてやる。
「暇、だったらな」
もうそろそろ社会人2年目とは言え収入が少ないのは変わりないから、90分で2万は高いけど、いつか振り向いてもらえるのを期待するしかない。
惚れた弱みだな…。
「今日は?」
「まぁ、夜までは暇だな」
それを聞いて、自分のパーカーのチャックを下ろして、砂月のズボンに手をかける。
「後払いでいいか?」
砂月が短く肯定するから、そのままずり下ろして、俺も全部の服を脱いで洗濯機の中に放り込んだ。
そのまま、砂月の腕を引っ張って、風呂場に足を向ける。
「セックスなしで風呂でイチャつきたいだけなんだけど、そういうのって有り?」
「……構わねえけど」

扉を閉めるとき、拷問だな、と聞こえた気がした。

fin.



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Under Lover=恋人未満。
8月中にエロは書き終わってたのに遅くなってしまった\(^o^)/
砂翔であげてるやつ、全部R-18なんだけど…どういうことなの…ビックリしたわ。
でも、好きなんだから仕方ないね><砂翔大好き!
執筆2012/08/12〜09/09

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